大きく、高く、目標を掲げた。ヤクルトのドラフト1位、星稜・奥川恭伸投手(18)が25日、石川・金沢市内のホテルで契約金1億円+出来高5000万円、年俸1600万円で仮契約を結んだ。

球団の高卒新人では07年ドラフト1巡目の由規(現楽天)以来の新人最高額での契約となり、背番号は11に決定。星稜の大先輩、松井秀喜氏がスタートした地から、世界へ羽ばたく。12月3日に都内で行われる新入団選手発表会でファンにお披露目される。

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初のサインを、笑顔でしたためた。これまで「奥川恭伸」と書いてきたが、友だちのアドバイスを受けながら字体を崩した。「まだ難しいです」とにっこり。そんな初々しい表情とは打って変わり、プロ野球選手としての目標を大きく、高く、掲げた顔はりりしかった。

「尊敬する人はたくさんいますが、やはり同じ星稜の松井秀喜さん。真摯(しんし)に野球に取り組んでいると聞いて、そういう選手になれるように頑張りたい」。偉大な先輩と同じく、金沢の地で金びょうぶの前に座った。松井氏も指導した同校の山下総監督からは、野球だけでなく日常生活にも気を配っていた逸話を聞き、感激した。最大の目標として「まだそんなレベルではないですが、試合に出て(将来的に)メジャーも目標の1つにできれば高いモチベーションを保ちながらできると思う。挑戦したいという気持ちはあります」と明かした。

日の丸も、目指す場所として挙げた。今年出場したU18ワールドカップ(W杯)では、3位決定戦にも進めず、世界の壁を痛感した。「プロに入ることがゴールではない。(日本代表への)目標を持って過ごす、過ごさないでは変わってくる」ときっぱり。プレミア12もチェックし「U18では結果を出せなかったけど、トップで代表に入って活躍したい」と誓った。

現在は球団から伝えられたフィジカルメニューなどをこなしながら、1月上旬から始まる新人合同自主トレに備える。今後も担当の阿部スカウトが継続して練習をチェックする予定で、奥川専用の育成プラン作成へ橿渕スカウトグループデスクは「普通の高校生とは違うアプローチをしている。最善のスタートを切らせたい」とした。

獲得したいタイトルを問われた奥川は、力強く言った。「投手が一番評価されるのは沢村賞だと思う。目標は高く持った方がいいと思うので」。足元を見据えながら1歩ずつ、“ド直球”で投手の王道を突き進むつもりだ。【保坂恭子】

◆高卒新人の最高条件入団 奥川が契約金1億円(出来高払い5000万円)、年俸1600万円の最高条件で仮契約。新人の契約金最高標準額が設定された94年以降、最高条件で契約した高卒新人は、年俸上限が1500万円だった昨年の根尾昂(中日)藤原恭大(ロッテ)まで過去15人。ヤクルトでは07年佐藤由規に次いで2人目になる。