硬球で最速150キロを誇る草野球右腕・杉浦健二郎投手(21)が、軟式野球のラスト登板を終えた。来季は国内独立リーグBCリーグの新球団、神奈川フューチャードリームスでプレーする予定。

この日は軟式野球国内最高峰とされる「SWBCJAPAN」地区対抗戦に、関東代表の一員で出場した。東海代表戦にリリーフ登板し、2回1安打2奪三振の無失点で勝利に導いた。

球場にスピードガン表示はなかったものの「2日前より少しだけ出ていたかと」と振り返った。現役中大3年生の杉浦は12日、自身が代表を務める草野球チーム「相模台レイダース」ではなく、籍を置く野球サークル「中央大学ベトレイヤーズ」のメンバーとして、大会に参加した。

当初はSWBC地区対抗戦に万全の状態で臨むつもりだったが「やっぱり、大学のサークルもこれで最後なので」と93球を投げた。力も入り、軟球としては自己最速となる145キロをマーク。「144キロも2球。常時140キロには達していました」。

SWBCJAPAN組織委会長で、全国3600超のチームが属する国内最大の草野球組織「ストロングリーグ」の会長でもある高橋優氏(41)は証言する。「全国大会の決勝だと140キロの投手は普通にいます。145キロは1年に1人か2人か、というレベルです」。今年は元オリックス投手の山崎正貴氏(30)が146キロを投げたという。

軟球で145キロ。くぼみのある軟球は、硬球より空気抵抗を受けやすく、一般的に球速が5キロ以上遅くなるとされる。単純換算だと、杉浦は硬球では150キロ以上を投げている可能性がある。関東代表の岡添勇太捕手は「速いし、重い。軟式球界では抜けている」と手放しで褒めた。11月のBCリーグトライアウトでは「フォームも制球も何も考えずに投げたら」150キロが出た。精度も上がってきているようだ。

トライアウト後、知人のトレーナーから助言され、インステップ気味のフォームを修正した。「上げた左足を真っすぐ下ろすようにしたら、少し速くなりました」と進化に自分で驚く。高校ではバドミントン部、大学では草野球のみ。専門的な野球指導は中学部活動以降、受けていない。

WEB動画なども参考にして、草野球の試合で試行錯誤しながら能力を高めてきた。来季、BCリーグで専門的指導を受けたら、どんな化学反応が起きるか。今回のフォーム修正での球速アップは、潜在能力の高さを大いに感じさせる。

これが軟式野球で最後の対外試合になった。仲間と楽しむために立ち上げた「相模台レイダース」も年内で卒業する。

「自分のために、で作ったチーム。それがいつの間にか、みんなのために、に変わって。自分が抜けても、次の世代に渡せるのはよかったなと思います」。

目標は、150キロをベースにした万能型の投手だ。早ければ、来秋のNPBドラフト会議で指名される可能性もある。「NPBへは行ければいいな、くらいです」。1年後、杉浦健二郎はどこで何をして、2021年に備えているのか。おそらく前例がないであろう挑戦の結末は、誰にも分からない。【金子真仁】

◆杉浦健二郎◆ すぎうら・けんじろう。1998年(平10)4月10日生まれ。相模原市出身。麻溝台高(神奈川)時代はバドミントン部所属。自打球で眼窩(がんか)底骨折をして以来、プレー中はゴーグルを装着。182センチ、74キロ。右投げ両打ち