少年野球界にもホームラン増の波が来た!? 小学生による12球団ジュニアトーナメントの準決勝と決勝が29日、札幌ドームで行われ、ヤクルトJr.が05年の第1回大会以来、14年ぶり2度目の王者に輝いた。今大会は、これまでの大会記録を更新する26本の本塁打が飛び出した。プロの世界ではフライボール革命が注目を浴び、ホームラン増傾向だが、小学生たちのアーチ量産の裏には何があるのか。そこには、金の卵たちが将来、硬式野球へと進むことを見据えた動きがあった。

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左翼方向へ鋭く打ち上がった打球がフェンスを越えた。決勝戦での先制2ラン。この1発が自身2本目、大会26本目だったヤクルトJr.の本島敬大選手(6年)は優勝を喜んだ後、ボールの印象を口にした。「(球が)飛びますし、あまり跳ねない。硬式に近いと思います」。中学進学後は硬式野球へ進む予定で「いい経験になりました」と振り返った。

硬式球に近い軟式球-。予選から決勝までの全15試合で飛び出した本塁打は26本。最多だった16年の20本を大きく上回ったが、今大会は、これまでとは異なる球が使用された。少年野球で使われてきたC号球が、今年からJ号球へと変更。大きさは直径が約1ミリ大きく、重さは約1グラム重くなった。特徴はボール自体が硬くなり、弾まないことで、反発性はアップしている。

指導者の中では、これが本塁打増につながったという見方が強い。今大会でチーム別の本塁打数トップの6本塁打を放った楽天Jr.の牧田明久監督(37)は「まずはフルスイングというのを徹底」する指導方針を示した上で、「ボールもJ球になって、多少スイングの強い子は飛ぶと思う」。日本ハムJr.の村田和哉監督(34)はより球の変化を痛感。「C球からJ球に変わったのは大きいと思う。子どもたちの能力もあるとは思いますけど、そういった要因があるのかなと。今年は大会が変わるなとは思っていた」と話した。

本塁打は野球の大きな魅力の1つ。予選で1試合2本、ヤクルトJr.との準決勝で1発を放ち、計3本塁打をマークしたDeNAJr.の小口陽喜選手(6年)は目を輝かせて言った。「もっと高いレベルで、将来はメジャーリーガーとなって大きい舞台に立ちたい」。

高校、大学、そしてプロ野球を目指す中で、硬式球に触れることになる金の卵たち。ボールの変化が、今後の成長だけでなく、野球の楽しさを実感し続ける一助になるかもしれない。【山崎純一】

○…ヤクルトJr.度会博文監督(47)が令和初の優勝を喜んだ。試合終了直後のマウンド付近で、選手たちの手で5度胴上げされた。前回大会は準決勝で敗退し、悔しい思いをした。「(今年は)球団50周年でもあった。令和元年でもある大会で優勝できて選手、スタッフ、父母の方々に感謝しています」と感慨深そうに話した。

◆12球団ジュニアトーナメント 日本野球機構(NPB)及びプロ野球12球団が主催する少年野球大会で、05年から毎年12月下旬に開催されている。各球団ごとに推薦及び編成したチームで小学5、6年生によって結成される(16人以内)。