「令和の怪物」のプロ野球人生が、いよいよスタートした。ロッテのドラフト1位右腕、大船渡・佐々木朗希投手(3年)が8日、さいたま市の球団寮に入寮した。

地元の野球仲間たちから寄せ書きユニホームを受け取り、雪の大船渡から笑顔で上京した。国内高校生史上最速163キロをマークした大物ルーキーは、どこまで羽ばたくのか。注目の1年目が始まる。

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14時14分14秒。マウンドでは高々と上げる左足をそっと地面から離し、佐々木朗は寮に入った。無数のフラッシュを前に心境を問われ「寮生活は初めてなのですごく不安な気持ちと、これから野球を思う存分できる楽しみな気持ちです」とよどみなく言い切った。

201号室のカギを受け取り、12畳ほどの“新居”に190・8センチの巨体を収める。運び込んだ荷物から、1枚のユニホームを取り出した。大船渡高校野球部の3年生22人の寄せ書きが書かれている。

「ろうきから学んだ3年間、野球人生で一番楽しかった」「高校に誘ってくれてありがとう」

雪が降る朝8時、高校・中学の野球仲間たちが、サプライズとして自宅まで届けてくれた。寒さにほほを赤く染める26人は皆、笑って見送ってくれた。車の助手席から大船渡、陸前高田、気仙沼…と復興が進む故郷を眺める。「今まで当たり前だった景色がなくなってしまうので、寂しいなと思いました」。

もう、普通の18歳ではいられない。新幹線を降りると、大宮駅ホームには10人近いファンが待っていた。寮周辺にも30人。今後しばらくは絶えず視線が注がれる。寮でも大半が先輩だ。「1人ではないので、他人に気を配りながら生活していかなければいけないと思います」と、一変する日常に気を引き締める。

年末年始も休まずに練習した。最後の2日間は家族水入らずで過ごした。大切な人たちへの恩返しへの決意を深め、11日からの新人合同自主トレからいよいよ本格始動する。

「どういった1年になるかはあまり分からないんですけれど、いろいろなことに慣れて、経験を積んで、充実した1年を過ごせればいいかなと思います」。

ニューヒーローの門出を祝うかのように、浦和の曇り空から一筋の日差しが寮を照らした。【金子真仁】