えっ!? マサさんがいる!! 今春キャンプで阪神の臨時コーチを務める山本昌氏(54=野球評論家)が8日、鳴尾浜球場でスタートした新人合同自主トレを電撃視察した。

自軍コーチの視察はあっても臨時コーチの視察、しかも初日は異例中の異例だ。少しでも早く、ドラフト1位の創志学園・西純矢投手(18)ら新人の特徴を把握しようという熱意と心意気。矢野燿大監督(51)も「めちゃめちゃありがたい」と大感激だ。

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グラウンドに飛び出したルーキーたちの前に、レジェンドが立っていた。「みなさんがそろうのでごあいさつに。ルーキーたちの子は(春のキャンプで)接する日数が少ないので、イメージだけでもと思って来ました」。新人合同自主トレに合わせて1、2軍の首脳陣が集結することは不思議ではないが、臨時コーチが姿を見せることは異例中の異例。鳴尾浜球場が驚きの空気に包まれた。

矢野監督も目を丸くする電撃のアポなし訪問だった。この日のために早朝に自宅を出発。ルーキーたちよりも早くグラウンドに現れた。志願して自費による電撃訪問だ。わずか数時間の滞在だったが、そのインパクトは強烈。視察した矢野監督も「ビックリした。知らんかった。ルーキーも含めて『少しでもいいアドバイスを』というところで来てくれて、めちゃめちゃありがたい」と感謝感激だ。

目線の先にはフレッシュな新人たちの姿があった。ドラフト1位の西純らが右翼でキャッチボールを始めると、三塁側ベンチ付近に移動して球筋を確認。「やっぱりピッチャーに目が行くので。西君のキャッチボールはすごくピッチャーらしいいいボールを投げていましたね」。生で見るドラ1の投球にほれぼれ。同3位の横浜・及川雅貴投手(18)、同6位の東海大九州・小川一平投手(22)の姿も熱心に見つめ、指導のイメージをふくらませた。

今春キャンプは1、2軍の全投手を指導する「巡回コーチ」を務める。キャンプ初日を沖縄・宜野座で迎え、第2クールは西純ら新人たちも待つ高知・安芸に向かう予定。若手が多い安芸では、秋季キャンプ同様に宿舎で講義も開催する。事前に決まっていた日曜日の仕事は避けられないが、それ以外の2月スケジュールは虎一色だ。「やれることは精いっぱいやろうと思っています」。山本氏はそう言い残すと、笑顔で帰りのタクシーに乗り込んだ。中日一筋31年、球界最高齢の50歳までプレーして通算219勝。竜で一時代を築いたレジェンドが、20年は完全な虎色に染まりそうだ。【桝井聡】

◆山本昌氏の昨秋キャンプ 中日時代にともにプレーした矢野監督の希望で、11月の安芸キャンプで臨時コーチに就任。キャンプ前には宿舎に選手を集め、講習会も行った。仕事で高知と名古屋などを何度も往復しながら、阪神帽をかぶり、ユニホームのパンツもタテジマ姿で熱血指導。藤浪には制球難を克服するために横振りを改善する必要性を説き、腕が自然と縦振りになるチェンジアップの習得を勧めた。同じ左腕の岩貞には手で壁を作る意識を、昨季9勝の青柳にはシンカーの投げ方を伝授。若手の高橋遥や望月らにも、通算219勝のノウハウを惜しげもなく伝えた。藤浪らナインは手厚い指導に感謝。球団は今春のキャンプでも臨時コーチ継続を要請し、本人も快諾した。