自主トレ先の沖縄・宮古島へ旅立つ日だった。当時オリックスの現役選手で結婚したばかりの風岡尚幸氏(51=現内野守備走塁コーチ)は、神戸市須磨区の夫人の実家にいたという。

出発の身支度をしていた早朝、大地震が発生した。「今まで生きてきた中で最も怖かった。壮絶でした。今でも鮮明に思い出します」。木造2階建ての家は砂ぼこりをあげ、瞬く間に全壊。2階で寝ていた家族は全員無事だった。

風岡氏は毎年1月17日には欠かさず、夫人の実家があった神戸・須磨まで足を運び、拝礼を行う。

「時がたてば、世間の中では風化してしまうものかもしれない。だけど個人で風化させなければいいと思う。1月17日がすべて。毎年もう1回頑張ろうと奮い立たせられています」

オリックスは「がんばろう神戸」を合言葉に、95年からリーグ2連覇、96年には日本一に輝いた。現在でもチームの一員として、復興への思いを胸に戦っている。風岡氏は「まだまだ復興してない。全員が復興して、初めて終了するもの。その人たちのためにも、わずかばかりではありますけど、神戸で試合をすることで、元気になってもらいたい」と思いを語った。【古財稜明】

◆風岡尚幸(かざおか・なおゆき)1968年(昭43)1月24日、愛知県生まれ。中部大付春日丘高から85年ドラフト6位で阪急(現オリックス)入団。97年オフ、阪神にテスト入団し、00年引退。引退後は阪神、中日でコーチを歴任し、16年からオリックスのコーチを務める。内野手。176センチ、71キロ。右投げ右打ち。

◆阪神・淡路大震災 1995年(平7)1月17日午前5時46分、兵庫県淡路島北部を震源にマグニチュード(M)7・3の地震が発生。神戸市などで観測史上初の震度7を記録。死者6434人、重傷者約1万人、被害家屋は約64万棟に上った。国内の大都市を襲った地震としては戦後最悪。