みんな、ホームランを狙え! 宮本慎也氏(49=日刊スポーツ評論家)が昨年11月30日、都内で開催された宮本慎也杯(日刊スポーツ新聞社主催)で小学生約120人に野球教室を行った。基本の動きに加え、同杯の独自ルール「バント禁止」の狙いをバッティング指導を通じて伝えた。

【キャッチボール】

野球で一番大事な練習が、キャッチボール! 基本の投げる、捕るやカバーして相手を思いやる気持ち、野球に必要なチームプレーなど、すべてにつながります。練習の肩慣らしでやる人と、例えば毎日キャッチボールを30球とか考えてやる人とでは、どんどん差がつきます。真剣に汗だくになるつもりで、これから取り組んでください。

まず、ボールの握り方! 右投げの人は、縫い目のひらがなの「つ」に見えるところを自分に向けて、人さし指と中指をかける。スローイングを安定させたいから指の間隔を広げて握る人がいますが、それだと回転が減ってフォークボールのようにボールが落ちてしまいます。指の間隔が開けば開くほど回転数が落ちるので、間隔は指1本分ぐらいにして、親指はその間にくるようにしてください。それも縫い目のところにあてること。このときの薬指が大事です。親指側を安定させるには、薬指がここの位置にあると小指も5本の指もちゃんと使えます。

【スローイング】

次は投げ方。肘から腕を上げると肩が詰まってそれぞれに負担をかけるので、手から上げるようにしましょう。ラジオ体操の動きをイメージすると、自然に手が上がります。踏み出す足は相手に対してまっすぐだけど、意識し過ぎるとどんどん体が開いて強いボールが行きにくくなります。つま先は、投げる方向に対して内側に入っても構いません。軸足でしっかり立つと体重が乗ってまっすぐ踏み出せます。胸はできるだけ相手に見せないように。投げるときに初めて相手に向くように意識してください。そして、投げた後は前足1本で立てるように。キャッチボールは自分のペースで投げられるので、これらを意識してやりましょう。

【捕球】

捕り方は、足を運んで体の正面で。片手でいいと言われますが、投げる方の手をグラブの親指に近づけて置いてください。ミスしてすぐに投げないといけない場合、ここにあったほうが送球が速い。ノーバウンドのボールにはグラブの人さし指が上を向くようにグラブを出しましょう。低めの場合はしゃがむ。もしも届かない場合は、片手でも構いません。このあたりのときだけ投げる方の手を添える。捕った後は、相手の胸や顔を狙って送球します。それがうまくできるようになったら、左肩や右肩を目標に投げましょう。

【バッティング】

大事なのは下半身。逆立ちで1時間は歩けないよね。力が強い下半身を思い通り動かすコツは、両足の親指の付け根でしっかり地面を感じること。そうすれば踏ん張ることができます。

スイングでタイミングを取る場合、グリップを握っている両手はできるだけキャッチャーの方向に引きます。自分の背中側に引くとボールが見づらくなるし、体も開きやすくなります。

また、グリップを握る上の手が大事です。上の手の肘をおへそのほうに入れようとすると、グリップエンドが出てきて、バットは体の近くを通ります。

そうすると、肘が脇腹でつかえてしまい、バットのヘッドが体から離れてしまうので確率良く打つことができない。『肘をおへその前に』と意識しましょう。難しかったらグリップエンドをボールにぶつける意識で。インパクトはおへその前です。このスイングができると、もし振り遅れても、速すぎてもボールに当たります。打ったら手首でバットを返そうとせず、体を最後まで回してください。

宮本杯がバント禁止なのは、みんなに思い切り振ってほしいから。サインで『待て』が出ない限り、ファーストストライクから積極的に打つこと。素振りはフォアボールを選ぶためにしていますか? バントのための人はいないよね。みんなホームランを狙ってください。

◆宮本慎也(みやもと・しんや)1970年(昭45)11月5日、大阪・吹田市生まれ。PL学園では2年夏に甲子園優勝。同志社大、プリンスホテルから94年ヤクルト入団。ベストナイン1回、ゴールデングラブ賞を10回受賞。プロ19年間で2162試合出場。2133安打、62本塁打、578打点、通算打率は2割8分2厘。18、19年、ヤクルトヘッドコーチ。04年アテネ五輪、06年WBC、08年北京五輪代表。アテネ五輪で銅メダル獲得。