球界の「今」にフォーカスする新企画「深掘り。」は、序盤戦を終えた2020年キャンプを取り上げる。

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昨季日本シリーズで対戦したソフトバンクと巨人は、車で30分の距離で鍛錬を積んでいる。球界の先頭を走る両軍のキャンプには、相違点と共通点がある。

チームのマネジメントという視点では、対極をいっている。ソフトバンクは、まだ紅白戦を行っていない。巨人は第2クール終了時点で3試合を消化。12日にも追加で試合が組まれた。

ランニング、ウエート、技術練習。個の強化に重点を置き、黙々と序盤を消化するソフト。巨人は3月20日の開幕を念頭に、坂本ら主力を「S班」に逃して第2クールまで枠を開け、若い選手を見極めている。

巨人が最後に日本一となった12年。交流戦でソフトバンクを4勝0敗と圧倒した。同点の9回に重盗を決め、犠飛で決勝点をもぎ取るなど、1点を取って守る方法論に雲泥の差があった。屈辱を受けたソフトバンクだが「繊細さ」に目指す野球のかじを切らず、個で圧倒する野球を追求。3年連続日本一につなげた。そこに意志の強さを感じる。

1軍の頂点から3軍まで、きれいなチーム内ヒエラルキーが成立。砂川リチャードのように、ジャンプアップが期待される超・好素材を特例で抜てきする気風はあるが、競争による下克上が起こりにくい戦力が組み上がっている。

両軍の共通点としては「見られの意識」がある。訪れるファンの数が、ほか10球団とは1桁、違う。拍手、歓声、ため息。練習に入り込んで単調にさせない。

ソフトバンクに移籍したバレンティンが、朝一番のアップから汗だくで、ポールからセンター間を全力ダッシュしている。幾重にも重なった人垣がフェンスにへばりついて凝視しているから、手を抜く隙間がない。阿部2軍監督が就任した巨人も同じ。2軍のひむか球場スタンドに陣取って動かないフリークが、目を光らせている。

ファンが緊張感を醸造し、選手に集中をもたらし、練習の質が上がり、力の差となる。2チームが長くリーグをけん引している理由と無関係ではない。【宮下敬至】