最速163キロを誇るロッテのドラフト1位・佐々木朗希投手(18=大船渡)は、一体どんな18歳なのか-。笑顔が増えたプロ入り後もなかなか表に出さない、球界注目ルーキーのリアルとは? 13日にはプロ初ブルペンで首脳陣の度肝を抜いた。石垣島から沖縄に移動しての14日も平地で捕手が座っての投球。実戦デビューへの期待が高まる“令和の怪物”のベールに包まれた内面に、インタビューで迫った。

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佐々木朗は、本当は何を発信したいのだろう。大船渡高時代から、何百もの質問を受けてきた18歳に、あえて質問をしなかった。「自由に話して」と。

「えーっ…」と笑いながら考え込むこと23秒、恥ずかしそうに切り出した。

佐々木朗 僕は結構、普通に、なんか、うわさで聞いた僕よりもたぶん、結構違うと思うんですよ…。

言葉を整え、続ける。

佐々木朗 結構、僕のうわさが流れるじゃないですか。こういう感じの人だよ、とか。野球のスタイルとか。でもたぶん、結構違うと思うんですよ。

野球の話を例に出した。

佐々木朗 よく体力ないとか言われるじゃないですか…普通だと思います。練習についていけないんじゃないかと言われるけど、高卒ならそんなもんじゃないかと思いますし。あとは…体弱いとかケガしやすいとか言われますけど、正直、高校入って、注目されてからは1回もケガしてないですし。…見てほしいなーと。1回じゃ分からないと思うので、見続けてほしいなーと。

ここまで離脱することなく、練習を積んできた。投げられなくなるほどの大きなケガもない。思春期まっただ中で、自分の性格のことを話すのは照れくさかったのかもしれないが、その行間には、強い意志がしっかりみえた。

味方が活躍するとベンチで腕を動かし、足をジタバタさせ、子どものように無邪気に喜ぶ-。どちらかというと、いたずら好きでおちゃめな高校生だった。

しかし、高校生史上最速163キロをマークした19年4月6日以降、そんな表情はほとんど見ていない。一気に増した注目度。カメラが向けられた瞬間に、感情を隠す。口も重くなった。18歳で同じ立場になったら…そう考えると、ごく自然な反応かもしれない。

無数のカメラ、スマホに囲まれながら、13日に堂々の初ブルペンを終えた。環境に慣れてはきている。昨年から撮影を続ける横山健太カメラマン(36)は「笑顔が増えたし、記者が取材している時もカメラマンとふと目が合う」と気持ちのゆとりと順応を推察する。

もちろん、思うこともあるようだ。石垣島キャンプで密着撮影した垰建太カメラマン(29)からの「たくさん撮られることをどう感じている?」という問いかけに、撮られる立場の声をしっかりと伝えた。

佐々木朗 練習中とか試合とかで撮られることは全然大丈夫です。移動中だったり、休んでいるときはそっとしてほしいなぁと…。

相手を傷つけないよう、相手を尊重しながら、自分の希望を伝える。この振る舞いも魅力の1つだろう。

インタビューの最後、一眼レフカメラを渡した。いつも自分を撮りまくる大人たちを、どう料理するのだろう。頼んでもいないのに、想像の斜め上をいった。

「はーい、こっち見て笑って下さーい」

「もっと笑顔下さーい」

何百回と耳にしたであろうカメラマンたちのセリフを、ノリノリで再現して撮ってみせた。おちゃめで無邪気で、実は愉快。リアルな18歳の佐々木朗に、久しぶりに出会えた。【金子真仁】

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○…一眼レフを持った佐々木朗は、左目でファインダーをのぞいた。左目が「利き目」であると判断できそうだ。写真のピントも、短時間のカメラ操作説明だけで見事に合っていた。昨年から佐々木朗を撮る横山健太カメラマン(36)は「今回は写真右側の垰記者が少し前に出て、僕が後ろでした。2人の中心にピントを合わせると、2人とも少しぼやける。でも佐々木君の撮った写真は2人にピントが合っている。垰記者に最初にピントを合わせ、正面に構図を戻してシャッターを切ると、こうなります」と解説。本業以外でも見せたセンスの良さ。ピッチングにもつながっている?