第92回選抜高校野球(19日開幕、甲子園)の開催可否を決める臨時運営委員会が、11日に大阪市内で行われ、センバツ史上初の中止が決定した。

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高校時代に「怪物」と呼ばれた江川氏は「春夏合同甲子園」プランをぶち上げた。「元球児として言わせてほしい。このまま春の出場校が甲子園に出場できずに終わるのは、あまりにかわいそう。毎日新聞も朝日新聞も主催の枠を取っ払ってもらって、(今年の)夏の大会にセンバツ出場校も参加して、一緒に試合ができないものだろうか?」。

「合同」だと出場校は80校近くに上る。実現には、クリアすべき問題は多い。それでも「出場校は多少重複するだろうし、期間も少し長くすれば…。ただ(試合)会場は分散させては意味がない。甲子園でやらないと」と力を込めた。

73年(昭48)に春夏連続で甲子園のマウンドに立ったが、夢の舞台への「切符」を手にする難しさは熟知する。その経験が後輩たちへの熱い思いとなる。「センバツが決まっていた選手たちには、出場を決めてからの『中止』で、あと1歩のところで夢を奪われた気持ちが強いはず」。

「合同」開催が無理なら、と代替案まで示した。「もちろん試合は大事だし、勝敗も意味がある。でも、甲子園はそれだけじゃないと思う。俺にとって甲子園は『夢の場所』だったけど、そこに行くことだけで価値があった。試合が出来なければ、練習だけでもいい。夏の本大会前の練習日に甲子園で20分でも30分でも練習するのはどうだろう? それから練習後は、『甲子園の土』を持ち帰る」。

江川氏も練習日にこっそり土を瓶に詰めて持ち帰った。「何年も何十年もたって仲間と昔話をする時に出るのは、必ず『甲子園に行ったんだ』という経験と、その証しの『土』なのですから」。2つのプランの土台は、自身の何物にも代え難い経験。その場所に「行く」ことの意義を強調した。【玉置肇】