阪神福留孝介外野手(42)が本来の開幕予定日だった20日、ヤクルトとの練習試合(神宮)でハッスル猛打賞を決めた。2回に左中間へ激走二塁打を放つと、その後も中前、右前と全方位に打ち分けた。新型コロナウイルスの感染拡大余波で開幕日が決まらず、モチベーション維持が難しい日々が続くが球界最年長は不動心。「今日が開幕」という強い気持ちを体現し、チームを叱咤(しった)した。

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打って、走って、盛り上げて。球界最年長福留は、幻の開幕戦でも全開スタートだ。2回、まずはチーム初安打。ヤクルト先発右腕清水の146キロ外角直球を中堅左に運んだ。中堅手塩見が回り込んで打球を処理する中、一塁を蹴った42歳は一気に二塁へ激走し“中前二塁打”をもぎ取った。

4回は2番手右腕杉山の145キロ直球を中前へ。7回には4番手左腕中尾の130キロフォークを右前へと全方位に打ち分け。オープン戦8試合は打率1割2分5厘だったが、しっかり3・20に合わせてきた。17年、18年に続く、タテジマ3度目の開幕猛打賞は幻になったが、さすが福留を印象づけだ。本来なら満員のはずのスタンドは無観客だったが、福留は福留だった。

福留 なかなか先が見えないですけど。自分の中で『自分の今日が開幕』というつもりくらいでグラウンドに出てきた。(開幕延期で)自分でメリハリつけないと、難しいことがあるので。そういうつもりで来て、こうやってできたので、よかったと思います。

新型コロナウイルス感染拡大の余波で開幕日が決まらず、モチベーションの難しい日々が続く。その影響もあってか、試合は2エラー、1暴投、2捕逸とミスが多発して2-7の完敗。もし本来の開幕戦ならと思えばゾッとするが、福留は強い信念、徹底した準備で、不動心を体現した。

塁上からもベンチを盛り上げた。助っ人野手3人と糸井、福留の主力組は3打席で交代の予定だった。だが2回の二塁打で激走すると顔をゆがめながら、三塁側ベンチに代走交代を求めるジェスチャー。すかさずベンチから「まだです!」と笑顔の総ツッコミが飛んだ。4回の安打後もグルグル手を回し、いたずらに代走を要求。今度は矢野監督から「コラ、コラ、コラ~(笑)」と明るい声が飛んだ。7回の3安打目で正真正銘のお役御免。プレー以外でも、元気を発信した。 今季で日米22度目の開幕を迎える背番号8は、ナインに呼びかけるように言った。「やることは特に変わらない。自分のしっかりした調整、できることをやっていく。それだけでしょう」。今は見えない開幕日に備えるだけ。大ベテランがプレーと背中でナインを鼓舞した。【奥田隼人】

▽阪神清水ヘッドコーチ(福留について)「本当にさすがだよね。(第1打席の激走も)あれは大きいよ」

▽阪神井上打撃コーチ(福留について)「孝介にも頼らないといけない。シーズン入ったら老若問わず、持ちつ持たれつというところが証明された」