日刊スポーツの名物編集委員、寺尾博和が幅広く語るコラム「寺尾で候」を随時お届けします。

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プロ野球の開幕日が、再検討を余儀なくされる事態に陥った。本来の3月20日から4月24日をメドに変更されたが、それも雲行きが怪しくなった。

阪神から藤浪、伊藤隼、長坂の3選手が新型コロナウイルスに感染。球界初の陽性反応で、その濃厚接触者にも感染者が出て他球団にも動揺が走った。

揚塩球団社長はこの3選手が3月14日に寮生を含むチームメート4人と、「社外の方」5人の計12人で大阪市内の知人宅で会食したと明かしていた。

しかし、この日になって一堂に会したメンバーはそれ以上にのぼるらしいことが分かってきた。球団は調査した上で状況を把握し、すみやかに公表すべきだ。

Jリーグと連携した「第3回新型コロナウイルス対策連絡会議」に続き「12球団代表者会議」が開催されたのが同12日。当日はチーム内に感染者が出た場合などの対策が話し合われた。

その2日後、自粛が指導されている中で“大宴会”は開かれたことになる。「社外の方」がどのような方々か知らないが、藤浪らと同席した20代女性3人も感染した。

電鉄という公共機関を親会社に持つ阪神球団の管理責任が問われても、仕方がない。中日の選手が自宅待機になるなど他球団に影響が出始め、さらに波紋が広がってきた。

最近、関西では大阪府・吉村知事が3月20日からの3連休で「大阪-兵庫」の往来自粛を要請したことが話題になった。兵庫県・井戸知事は現在も往来自粛の継続方針を示している。

野球、Jリーグのフランチャイズがまたがり、生活、経済などで一体感のある両府県で往来自粛を巡る賛否両論が起きたので、対策連絡会議の専門家チーム座長の東北医薬大医学部感染症教室・賀来満夫特任教授に問うた。

「両府県の単独で判断できる部分と(近隣を含めた)関西の生活圏という考え方があるが、私は生活圏で協力して考えるのが必要かと思いました」

東京をはじめ都市圏に感染者が急増する中、「関西」のくくりで防止策を徹底すべきと受け止めた。このままでファンを楽しませることができるのか-。開幕日を策定する球界は、正念場を迎えた。