プロ野球の大洋、ヤクルトで監督を務めた関根潤三氏が死去したことが9日、分かった。93歳。

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関根氏は茶の間に野球の楽しさを伝える名解説者でもあった。希代の理論派だったが、フジテレビ「プロ野球ニュース」や、50年にわたり務めたニッポン放送「ショウアップナイター」の解説では穏やかな語り口が印象的。20年以上にわたりコンビを組んだ、元ニッポン放送でフリーアナウンサーの師岡正雄氏(60)は「紳士的で優しく、穏やかだった」と振り返る。

隣席で眼光の鋭さを感じることがあった。「選手のわずかな変化は見逃さなかった」。先発投手が一定の球数で中盤に差しかかり、余力十分に思える内容に、言葉を挟む。「おや、ちょっとおかしいよ」。異変のポイントを聞いても、多くは語らない。1度は「何となくですね」と返されたこともある。だが投手の球が浮き出し、すごみを感じたことが何度もある。「プロフェッショナルの目で観察し、中継のポイントをつくってくれた」と放送を熟成させてくれた。

深く掘れる知見も持ち合わせた。それでも貫いたシンプルに伝えるスタイル。師岡氏の言葉にヒントがある。「プロ野球は楽しいものだから楽しくやろう、と最初のころに言われた。難しく考えないで元来、プロのプレーを人に見せるもの、聞かせるものだから、俺たち(実況)が楽しくやりなさいと」。野球の本質を、穏やかに語り続けた話し手だった。【広重竜太郎】