プロ野球の開幕を待つ日本ハムファンのみなさんへ。日刊スポーツでは「Fゼミ」を開講。開幕まで時間があるいまだから、もっとファイターズのことに詳しくなりましょう。第1回の授業は「歴史」。2度の首位打者など数々のタイトルを獲得し、今年指導者としてチームへ復帰した“北の侍”、小笠原道大選手について学びましょう。

津軽海峡を渡り、北の大地へやって来た待望のプロ野球団には、1人の侍がいた。高く掲げたバットを斜めにぴたりと構え、豪快にフルスイング。本拠地移転後、札幌ドームでの初本塁打は、04年3月20日のオープン戦で飛び出した。「ファンの方に乗せられて打ってしまった」。巨人高橋尚から放った北海道のファンへ向けた名刺代わりの先制弾に、詰め掛けた4万1000人は熱狂した。

東京時代には、犠打をしない最強の2番打者として、ビッグバン打線の中核を担った。小笠原が打席に立つと、スタンドでは青いイルカのバルーンが揺れる。観光大使をしていた東京・小笠原村のザトウクジラが由来となった応援スタイルは、本拠地移転後も受け継がれた。

奇想天外な言動とプレーでファンの心をつかんだ新庄が“陽”なら、寡黙にバットパフォーマンスに徹する小笠原は“陰”のヒーローだった。愛称の「ガッツ」通り、指を骨折しながら本塁打を打つ気迫。高校通算0本塁打から、努力で球界を代表する選手にのし上がった。日本ハム在籍最後の年となった06年は、本塁打、打点の2冠に輝き、本拠地移転後初のリーグ優勝、44年ぶりの日本一に貢献した。

中日で現役を終えた15年、引退会見で「気持ちの火、野球に対しての情熱は消えない」と語った努力の天才は今季、ヘッド兼打撃コーチに立場を変えて、14年ぶりに日本ハムへ帰還した。熱血指導で早くも伸び悩む若手の心を捉え、チーム変革への歩みを進めている。【中島宙恵】

◆小笠原道大(おがさわら・みちひろ)1973年(昭48)10月25日、千葉県生まれ。暁星国際からNTT関東を経て96年ドラフト3位で日本ハム入団。入団時は捕手。3年目から内野手転向。02、03年首位打者。06年は打点、本塁打の2冠でMVPに輝き、日本一に貢献。巨人にFA移籍した07年、リーグをまたぎ2年連続MVPを獲得し、13年オフ中日へFA移籍。15年引退。16~19年に中日2軍監督。通算打率3割1分は歴代9位(4000打数以上)。通算378本塁打、2120安打。ベストナイン7度、ゴールデングラブ賞6度。178センチ、84キロ。右投げ左打ち。