今季の開幕が見えないなか、ちょっと昔のヒーローにひたりましょう。日刊スポーツ評論家の浜名千広氏(50)にOBのすごさを振り返ってもらう「ホークス・ヒーロー列伝」を随時掲載します。

第1回は「天才打者編」。浜名氏が絶賛したのは、左打者が吉永幸一郎氏(50)で、右打者は城島健司氏(43=現ソフトバンク球団会長付特別アドバイザー)。誰もまねできない打撃センスを挙げた。【取材・構成=浦田由紀夫】

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1989年(平元)のシーズン、新球団の福岡ダイエーホークスがスタートした。あれから31年。最下位の屈辱も日本一の歓喜も経験し、福岡をはじめ九州の野球ファンを楽しませてきた。92年から01年までホークスでプレーしてきた浜名氏に、福岡移転後の歴代OBで打者としてすごいと思うプレーヤーを挙げてもらうと、2人の選手を即答した。

浜名氏 左打者なら吉永、右打者なら城島。2人とも、とにかく天才バッターの印象がすごい。現役時代は間近で打撃を見てきたが、本当に天才。2人に共通して言えるのは、バットのとらえ方に特徴がある。球を運ぶという表現が一番ピッタリくるフォームだ。

吉永は87年ドラフト5位で南海に入団。巨人に移籍する前の00年までホークスに在籍し、指名打者や捕手で活躍。2度ベストナインに輝いた。

浜名氏 吉永の一番の特徴は、前に打つポイントがあること。今の時代は引きつけて打つのがセオリーみたいになっている。柳田も引きつけてポイントを体に近くして打っている。落ちる球が多く、変化した後をとらえるのが主流だが、吉永の場合は落ちる球なら落ちきる前にとらえることができる。センスがあるからできる。打者はポイントを前で打つのが理想だけど、なかなかできない。

吉永は低めの球を得意としていた。柔らかい体をうまく使ってフルスイングしていた。

浜名氏 嫌な球ならファウルにも出来るし、甘く入れば本塁打に出来る。器用さもあった。門田(博光)さんみたいに40発は打てる力はあったと思う。

城島も「スラッガー捕手」としてダイエー黄金期を支えた。大リーグのマリナーズ、阪神で活躍し、昨オフからアドバイザーとして球団に復帰した。

浜名氏 城島も吉永と同じく、前でさばくタイプだが、勝負強さという武器もつく。これもまねできない。集中力もすごかった。チームが打ってほしい時に打つのが城島だった。

ともに「打てる捕手」。今となってはなかなか出てこないタイプでもある。

浜名氏 2人とも素質としては、何年も3冠王が取れる打者だと思ってみていた。マネしようとしたが、できなかった。

◆吉永幸一郎(よしなが・こういちろう) 1969年(昭44)5月1日生まれ、大阪府出身。静岡の東海大工(現東海大静岡翔洋)から87年ドラフト5位で南海(現ソフトバンク)入団。4番指名打者や捕手、一塁手として活躍。94&96年ベストナイン。城島の台頭もあって野手での出場が増えた97年は、福岡ドーム初の1試合3本塁打をマーク。99&00年の連覇に貢献。球宴出場7回。01年大野倫とのトレードで巨人に移籍し、03年限りで引退。実働14年間の通算成績は打率2割7分8厘、153本塁打、505打点。17年に学生野球資格を回復し、現在は少年野球の指導も行っている。右投げ左打ち。

◆城島健司(じょうじま・けんじ)1976年(昭51)6月8日生まれ、長崎県出身。大分の別府大付(現明豊)から94年ドラフト1位でダイエー(現ソフトバンク)入団。捕手として99、00、03年の優勝に貢献。03年は7月のオリックス戦でプロ野球タイの1試合6安打を放つなど、捕手でシーズン最多の182安打をマークし、MVPも獲得。05年オフにFAでマリナーズ移籍。09年オフに阪神に移籍し、12年限りで引退。日本実働14年間の通算成績は打率2割9分6厘、244本塁打、808打点。球宴出場9回。昨オフ、球団会長付特別アドバイザーとして15年ぶりに古巣復帰。右投げ右打ち。