ソフトバンク王貞治球団会長(80)が29日、オンライン取材に応じ、3年ぶりのリーグV奪回と4年連続日本一を目指すチームに「開幕ダッシュ」を求めた。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、開幕は約3カ月遅れの6月19日に決定。前例のないシーズンとなるが、「与えられた条件でどう戦うか。勝利をもぎ取っていくか。腕の見せどころ」と克己で乗り越えることを求めた。

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誰よりも開幕を待ち望んでいる1人に違いない。ペイペイドームで練習に汗を流す選手たちを見守りながら、王球団会長はオンライン取材で思いを発信した。

王会長 これまで選手たちも調整がしんどかったと思う。(開幕決定から)選手たちが、どれだけペースを上げられるかが重要。メンバーも毎年変わるし、どのチームも選手が入ったり出たりがある。昨年と同じという戦いは絶対にない。特に今年の戦いは試合数も少ないし、スタートダッシュは大事になる。

V奪回、4年連続日本一への道はつながった。球宴や交流戦中止でブレーク期間がなく、例年より23試合少ない120試合の戦い。王会長は開幕ダッシュを決めて、チームが乗っていくことの重要性を説いた。

今月20日で80歳となった。コロナ禍の影響で球団事務所での恒例の「誕生会」もなかった。緊急事態宣言が福岡にも出た先月7日からは福岡市内の自宅にこもり、自粛生活を余儀なくされた。外出は気分転換の散歩くらい。気持ちをなごませようとしても落ち着かない日々が続いた。傘寿となった誕生日。「あと1カ月の辛抱。思い切り暴れるよ」と話していた。

国難ともいえる新型コロナウイルス感染拡大は、プロ野球生活60年を超える王会長にとっても初体験の衝撃。ホークスだけでなく、球界全体の成長と発展を常に視野に入れているだけに、誰よりも現状を危惧していたはずだ。開幕後も無観客でのプレーとなる。

王会長 この状況の中で自分たちの力をどう発揮するか。常にファンの方が見てくれているんだ、という思いを強く持って、1つ1つのプレーに集中していきたい。我々はプロですから。与えられた条件でどう戦いを進めていくか。勝利をもぎ取っていくか。逆に言えば、腕の見せどころ。新鮮な戦いができるんだと、プラス要素に考えながら試合に取り組んでいきたい。

試練は乗り越えられる。世界の王は、選手たちの克己を楽しみにしている。【佐竹英治】

○…王球団会長は夏の甲子園中止に心を痛めた。「高校野球が中止になることなんて本当に考えられなかった。日本の場合、甲子園大会は絶対だったからですね。選手はもちろん、老若男女、野球をやったことがある人もない人も、みんな特別な思いを持って期待していたと思う。本当にあるべきものがないというのがこんなに寂しくなっちゃうもんかと感じている」としんみりと話した。自身も早実時代にセンバツ大会V投手の経験がある。「何が一番いいことかと、前向きにとらえていきたい。むしろ新たな気持ちで野球に取り組んでいけるのではないかとも思う」と、切り替えの大切さも呼びかけた。