あの夏の悔しさが、成長につながった。福島・玉川村出身で社会人野球チーム、エイジェック(栃木・小山市)のエース大和田啓亮投手(23)が、創部3年目のチームを都市対抗野球大会(11月22日~)に導く覚悟だ。

6年前、大和田は日大東北(福島)のエースとして、輝きを放っていた。3年夏の県大会決勝で、当時7連覇中の聖光学院と対戦。日大東北が4点リードで迎えた9回裏1死一、二塁の場面。見事、遊ゴロに打ち取って併殺コースだった。大和田は「やっと終わった。念願の甲子園だと思った」。しかし、二塁手が一塁へ悪送球し1つのアウトしか取れなかった。大和田は「気持ちが切れてしまった」と続く打者に3連続長打で同点に追いつかれ、11回裏にサヨナラ負けした。大和田は「最後まで打者に全力で向かっていけなかった」。大きな悔いが残った。

その後、大学を経て社会人へ。2年目のシーズンは、コロナ禍の影響で実戦から遠ざかってはいるが、しっかり自分と向き合っている。持ち味のキレのある直球を磨くため、昨年はほとんど取り組まなかったウエートトレーニングに注力。爆発系と筋力系、可動域のトレーニングを1日ごとに分けながら毎日行っている。「例年のこの時期は、しっかりとしたウエートトレーニングはできない。自分の体としっかり向き合う時間がとれている」と、充実感も漂う。

プロを目指す気持ちに、変わりはない。投球の幅を広げようと、ツーシームを習得するなど、努力を惜しまない。あの夏の悔しさが、今も大和田の原動力となっている。【佐藤究】

◆大和田啓亮(おおわだ・けいすけ)1996年(平8)6月14日生まれ、福島県玉川村出身。中1から須釜中で野球を始め、日大東北では2年秋からエース。13年秋に県内公式戦95連勝中の聖光学院に完投勝利。14年春に県大会準優勝。日大野球部では東都リーグ通算2勝。19年エイジェック野球部に入部。身長179センチ、85キロ。右投げ右打ち。好きな言葉「打破」。