ソフトバンクの今季の主砲が目覚めた。ヤクルトから移籍のウラディミール・バレンティン外野手(35)が開幕23打席目での移籍後初アーチから、2打席連続弾。4回の2発目は左翼席上段への推定飛距離145メートルの特大弾だった。先発勝利のバンデンハークとの“オランダ人コンビ”の活躍で西武に連勝。主砲のお目覚めで借金もゼロに戻して、連勝モード全開だ。

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けた違いのパワーだった。4回、ソフトバンク4番のバレンティンが、ゆうゆうと一塁へ歩き出す。左翼席ポール際上段の奥深い座席で乾いた音が響いた。場外へと消えていきそうな推定飛距離145メートル弾。ソフトバンクでの“アーチデビュー”は、特大弾を含む2打席連発で飾った。

「1本目は自分のポイントに来た球はしっかりと強いスイングをしようと思っていた」。移籍初アーチは2回の第1打席。134キロのスライダーに反応した打球が一直線に左翼席に突き刺さった。先制ソロでチームに勢いをつけた。「2本目は簡単なボールではなかったけど、完璧に捉えることができました。距離は関係ない。チームが勝つことが大事だ」。開幕6戦目。23打席目での移籍初アーチで感覚が戻ったのか、2発目は初球138キロ直球をピンポン球のように飛ばした。

2打席連発はともにイニングの先頭打者だった。この日、移籍後初めて左翼でスタメン出場。指名打者でなく、セ・リーグでは当たり前だった守備をこなしながらの打席で自分を取り戻した。「感覚も良かったね」。本塁打パフォーマンスの「ピーポーピーポー」も満面の笑みで2度繰り返した。

チームメートへのアドバイスを忘れない。キャンプでは当時育成だったリチャードに打撃理論を伝授した。開幕してからも不振の松田宣に24日試合前の練習で、通訳を交えて直接“アドバイス”を送っていた。「憧れの王さんのチームで野球がしたい」。自分が打つだけでなく、チームの勝利のために自分が存在していることを心得ている。工藤監督も「ずっと指名打者は感覚も鈍るのでたまにレフトを守ってもらうように話している。1号、2号はチームに元気を与えてくれた」と5割復帰をもたらした4番打者を絶賛した。

バレンティン 試合数が少なくなって(120試合)も30本は打ちたいね。

来日9年でシーズン30本以下だったのは15年の1年だけ。16年から4年連続30本以上の本塁打を放っている。この日の2発で通算290号。300号の通過点は、あっという間に訪れそうだ。【浦田由紀夫】