巨人軍の4番を張る男だからこそ-。岡本和真内野手(23)が、土壇場で試合を振り出しに戻した。1点を追う8回。広島菊池保のシュートを右翼スタンドへぶち込んだ。21日阪神戦での今季1号も速球を右翼へ運んだ。反対に緩い変化球は左翼へ引っ張る。昨季から体現しつつある「TPO弾」。常に紳士たれと「時」と「場所」「状況」はわきまえる。試合は今季初の引き分けに終わったが、4番が存在感を示した。

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「時計」の針は、午後8時51分を指していた。自分が座る「場所」は4番。「状況」は1点を追う8回先頭。4打数無安打のまま、終われるわけがない。岡本は初球144キロのシュートに、逆らうことなくバットを繰り出した。速球を引きつけ、反対方向の右翼スタンドへ。「一振りで仕留めることが出来て良かった」。ゲーム終盤に打つか、凡退するか-。「TPO」をわきまえているからこその振る舞いだろう。

20年初アーチも、適切に仕留めた。21日の阪神戦。ガルシアの143キロを右翼スタンドへ運び、開幕3連勝に貢献した。速球に対して、無理に引っ張ることはしない。開幕前の練習試合でもそれは同じ。16日のロッテ戦では、151キロをライトへしばき上げた。反対に13日の日本ハム戦では128キロと緩い変化球を引っ張り、左翼スタンドへ放り込んだ。

年を重ねるごとに「TPO弾」を使い分ける。18年は33本中、左翼が21本と大多数を占め、中堅、右翼はともに6本だった。それが31発の昨季は大きく変わった。左翼に14、中堅に8、右翼に9。半分以上のアーチを中堅から右翼への反対方向へぶち込んだ。

「巨人軍は常に紳士たれ」。そんな球団で23歳ながら4番を張る男は打席での落ち着きが違う。球をギリギリの「時」まで見極める目を備え、速球、変化球の「場合」に応じて、左右へ打ち分ける適応力がある。それが4番の仕事「場」。TPOに徹し、引き分けに持ち込んだ。【栗田尚樹】

▽巨人原監督(岡本の同点ソロに)「もう少しランナーを置いて打席に立ちたいだろうなと。立たせたいというね。前の人がちょっとまだ本調子じゃない。走者がいる場面は投手はもっとプレッシャーがかかるんじゃないかなと思いますね」