「ハマの新星」が今季も出現した。プロ初登板初先発のDeNAドラフト2位の坂本裕哉投手(22)が初勝利をマークした。5回まで無安打投球で中日打線を封じ込め、6回1安打無失点の好投。開幕ローテを滑り込みでつかみ取ったルーキーが、デビュー戦で躍動した。チームに受け継がれる大卒左腕の系譜をがっちりと受け継ぎ、華々しくスタートを切った。

端正な顔つきの美青年が歴史の扉をこじ開けた。デビューマウンドに上がった坂本がプレートに頭を下げた。待ちに待ったプロ初登板。春は過ぎ去った球春が多湿な梅雨に訪れた。「試合が近づくにつれて緊張感が高まって。周りからは『表情が硬いぞ』と言われたけど、自分の中ではいい心持ちだった。マウンドに上がったら緊張はなかった」。プレーボールのコールと同時に初々しさは消えた。

スカッと爽快な投球内容でイニングを重ねた。1回2死から高橋を四球で歩かせるも、2回は阿部、京田、郡司を3者連続三振。5回まで涼しい顔のまま無安打投球。左打者の内角、右打者の外角への制球がさえわたり優位を保った。左右均等に並んだ相手打線を翻弄(ほんろう)。「ストライク先行でゾーンで勝負できた。とにかく低め低めを意識して投げたので打ち取れたかなと思います」。5回までをテンポよく60球でまとめ打線の援護も呼び込んだ。

余力十分だった6回に不運に見舞われた。2死一、二塁。高橋への初球が暴投となり本塁ベースカバーに入った時に右足首をひねった。1度、ベンチに下がり治療を受け「僕自身は絶対に1点もやらないぞという気持ちで投げていました」。内に秘めた闘争心をのぞかせた。ひやりとさせたが足首の状態については「ちょっとひねっちゃっただけ。次までにしっかりと準備したい」と話した。

大卒新人投手の1年目シーズンでの活躍がチームの系譜として受け継がれているが、大卒左腕のプロ初登板初勝利は球団史上初の快挙。エース今永、新人時代に2ケタ勝利を挙げた浜口、東でもデビュー戦は白星には届かなかった。開幕3日前の16日、監督室の扉を開けた。ラミレス監督から「オープン戦の時は実力に疑問を持ったこともあるけど十分にやっていける。おめでとう!」とローテ入りを伝えられデビューにつなげた。「ハマの超新星」がきらびやかに輝いた。【為田聡史】

◆坂本の制御力 ボール球の次球に好投の理由があった。次球もボールゾーンに投じたのは12球。ストライクゾーンは17球で、投手有利の状況を保ち続けた。ボール→ボールの内訳も秀逸で、12球のうち2球は、三振を奪いに意図的にワンバウンドとしたチェンジアップ。ほかの多くも判別が微妙なギリギリに集めた。初回の四球、6回の死球を除けば、ほぼ完璧な制御。立ち上がりから変化球を多く配した捕手戸柱のタフなリードに応えた。