<DeNA6-0阪神>◇26日◇横浜

阪神がNPBで史上初の「投げ銭」システムを導入した26日DeNA戦に「潜入」した。球団が承認し、スポーツ特化型ギフティングサービスを運用するエンゲートのサイト内で“デビュー戦”となった。

いやあ、スゴイ時代だ。5回、先発西勇が2死満塁のピンチを背負う。だがオースティンを投ゴロに抑えて脱出。その瞬間だ。スマートフォンの画面が動く。ユーザーから「パチパチパチ」と拍手ギフト(100pt)が西に届く。「NICEPLAY」(100pt)のギフトもチームに入る。

これが「投げ銭」の面白さなのか。つまり、窮地で内角高めにシュートを投げきった西の卓越した「投球技術」への対価だろう。試合終盤以降も「ナイスピッチング!」(300pt)などが続々と西へ。試合開始時点は710ptのチーム7位だったが、試合後の午後9時時点は1610ptで倍増以上の5位までランクアップ。ユーザーがクレジットカード決済で購入したポイント(1pt=約1円)をチームや選手に贈る仕組みで、孤軍奮闘の大黒柱にさまざまなエールが届いた。

盛り上がったのは1点を追う7回の攻撃前だ。ラッキー7でジェット風船の「みんなで飛ばそう!」(300pt)を矢野監督などへ9連発。完封負けで、この場面がこの日最大の見せ場だったが、コロナ禍で無観客が続くなか、さまざまな楽しみ方を提供している。

虎党の愛情は試合前から伝わった。前日25日にページを開設。2軍のベテラン俊介に「推し」ギフト(1000pt)を贈るファンもいて「今年はまだ一軍に上がってないけど大好きな選手だから頑張って欲しい」とメッセージ。才木や福永ら、1軍で投げていない選手にもギフトが集まった。

あるファンは「のんびりしていてよかった。こういうの好きです」と書き込んだ。かつて携帯電話が出現した時、誰もが驚いたがすぐに当たり前になった。「プロ野球のファンサービス史上、画期的な1日だった」と話す、分岐点になるかもしれない。【酒井俊作】

◆投げ銭 デジタル技術を用いた寄付(ギフティング)サービスで、ユーザーはオンライン上で金銭や金銭に準じるギフトをチームや選手に提供する。エンゲートではポイント購入後、サイト画面のボタンを押せば該当ポイントがチームや選手に届く。サッカーやバスケットボールなど、多様なスポーツで約50チームが採用。阪神では30種類以上のギフトを用意し、収益は選手に還元するほか、タイガースアカデミーなどの野球振興、社会貢献活動にも活用する。この日、8回の同点機で近本にギフトが殺到したように、静止時間が長い野球は「投げ銭」しやすいスポーツだといえる。