もうしばらくの間、無観客が続くプロ野球。ファンの熱狂にかき消されてきたグラウンドの「音」を測定し、徹底的にフォーカスしてみた。王道のホームランから、普段なら絶対に伝わらない音まで…試合前から元気な西武は、8回に木村文紀外野手(31)が起死回生の逆転満塁本塁打を放ち、ソフトバンクを豪快にうっちゃり。好調のロッテも、8回に4点を奪って逆転で首位を守り、大音量を記録した。耳を澄ませば、新しい野球の楽しみ方が見えてくる!

※測定はAndroidアプリ「デシベルX」を使用。

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ノってるチームは、声も響く。ロッテが終盤の逆転で6連勝。単独首位を守った。

1点を追う8回2死一、二塁。9番藤岡が適時二塁打を放つ。井上が逆転のホームを踏むと、ベンチの選手たちはこの試合最大の85・7デシベルで叫び、全員がこぶしを突き上げた。

この日は風速4メートル程度のZOZOマリン。無観客試合は平均48デシベルで進む。中盤までリードされる展開ながら、河野打撃コーチはベンチでいつものように声を出した。「さぁ、○○(選手名)!」。平均64デシベルのエールを何度も打者に送る。球場外野後方にある海岸の波打ち際は63デシベル。それに近い音量の、ロッテらしい、いつもの心地よい音だ。

3月の練習試合では「(声の思いが打者に)伝わってないんだよ~」と苦笑いしていた。若手主体の試合では、声が出ない場面も多かった。好調の現在は河野コーチが目立たぬほど、選手たちから重層的に声が出る。試合前には、音量未計測ながら荻野の独唱から始まった「ハッピーバースデー♪」。鳥谷の39歳の誕生日を全員でサプライズで祝うなど、開幕7試合目にしてベンチのムードは非常にいい。

まだ観客がいない分、球場の音響は少しだけ絞られている。場内アナウンス担当の谷保恵美さんは「音響のプロが、私の声もBGMも、ビジョンの音もバランスを取って、微調整してくれています」と話す。平均76デシベルの朗らかな声で、打者を送り出す。一方、オリックス山岡がアクシデントでベンチへ下がる際は、66デシベルに抑えていた。いろいろな声が、ボールパークの機微を演出している。

9回表、ロッテのベンチは70デシベル台の声援を、ストッパー益田に送り続けた。最後の打者を二ゴロに打ち取り、73デシベルの「ヨッシャー!」でゲームセット。ヒーローインタビューを終えた藤岡を、河野コーチは「ナイス、裕大!」と62デシベルでたたえていた。【金子真仁】

 

◆バットと打球音 木の材質によって音の大きさ、音色ともに異なる。大まかに分類して、音が大きい順でアッシュ、メープル、アオダモとなる。長年野球界に携わるメーカー担当者は「打球音の大きさと打者のパワー、スイングスピードは、基本的に比例する。加えて、ボールが当たったポイントが真芯に近いほど、反発音は出る」と解説。キャリアを積めば、打球音を聞いた瞬間に本塁打か否か分かるようになるという。加えて、同じ材質の木でも原産国が違えば打球音で分かるという。

 

◆一般的な音の大きさ 

20デシベル(無音に近い) 木の葉の擦れる音

30デシベル(非常に静か) 深夜の寝室

40デシベル(静か) 換気扇

50デシベル 空調の音

60デシベル(やかましい) 会話の音

70デシベル 掃除機

80デシベル ボウリング場

90デシベル(非常にやかましい) パチンコ店内

100デシベル 電車の通過時

110デシベル 車のクラクション

120デシベル(苦痛を伴う) 飛行機のエンジン音

180デシベル スペースシャトルの打ち上げ