広島のさまざまなデータを計測し、その裏側を探っていく日刊スポーツの不定期連載「カープ観測」。

開幕3カードを終え、5勝3敗1分けと好スタートの要因になった攻撃力に迫る。昨季開幕9試合では鈴木誠が12打点を挙げ、総得点の約39%を1人でたたき出していた。主砲頼りの攻撃から脱却。下位打線の3人で18得点を挙げるなど厚みを増した広島攻撃陣が好発進を支えた。

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開幕9試合で記録した「18」という数字が、広島の好スタートの原動力になっている。打順別成績を見ると、リーグ3位の総得点43点のうち投手を含めた下位打線3人が全体の約42%にあたる18得点を記録している。上位3人の計13得点を上回る数字だ。開幕から不動の1番ピレラ、3番西川、4番鈴木誠が3人で約半数の20打点をたたき出す一方で、下位3人も計15打点。上位と下位が連結した“ツープラトン”の攻撃が相手の脅威となっている。

開幕戦でプロ初本塁打を放った大瀬良など、広島投手陣の打撃面での健闘が光る。攻撃に厚みをもたらしているのが、7試合で7番起用の堂林と8試合で8番で起用されている田中広の2人だ。堂林は7試合で打率4割1分4厘、2本塁打、4打点。チームトップの7得点をマークする。3連覇した18年まで1番を務めた田中広も打率3割4分5厘、2本塁打、6打点。チームでただ1人フル出場を続けるなど復調をアピールする。

上位打線を定位置とした田中広や菊池涼を下位に置く打線をシーズン前からテストした。朝山打撃コーチは「下位で1、2番のような役割をしてくれれば、(1番)ピレラをクリーンアップのような形で迎えられる」と狙いを説明していた。上位が出塁すれば中軸でかえし、中軸が出塁すれば下位でかえし、下位が出塁すれば上位でかえす-。佐々岡監督が目指す攻撃を実践。昨季開幕9試合でチーム総得点の約39%を鈴木誠1人の打点に頼っていた打線は今季、得点源に偏りはない。鈴木誠の打点の割合は約21%にとどまる。

打力だけでなく、走力があり、小技もできる選手が多く並ぶ。ここまで盗塁数はリーグ4位の3個も、進塁打や好走塁など、記録に表れない機動力はみられる。27日に先発復帰した5番松山や打撃が上向き傾向にある6番会沢が復調すれば打線はさらに厚みを増す。ベンチには出場機会に飢えた実績者長野や再アピールに燃えるメヒアも控える。好発進の広島打線もまだ最終形ではない。【前原淳】