広島が育成強化を目的として新設した「2・5軍」の裏側に「潜入」した。松田元オーナー(69)発案で今年3月に発足。広島・廿日市市内の大野練習場を拠点とし、投手コーチ、スコアラー、トレーナーの3部門の指導の下、若手投手陣の強化促進を狙う。

“卒業生1号”になった島内颯太郎投手(23)の進化など、底上げを進めるチームの新たな取り組みを取材した。【取材・構成=古財稜明】

広島は育成強化を目的に、今年3月から新部門を発足させた。2軍でも、リハビリ組の3軍でもない。通称「2・5軍」だ。技術指導を行う畝3軍統括コーチ、データや映像解析を行う飯田スコアラー、トレーニング担当の東谷コンディショントレーナーが同軍の3部門の専任として指導を行っている。選手は戸田、平岡、島内、山口、佐々木の5人が強化指定選手として入門した。

投球の軌道や回転数が計測できるラプソードや、スロー再生ができる高速度カメラをブルペン投球練習でフル活用。投球時リリースの位置や、手首の角度をデータで分析。練習の前後で映像データをすぐに確認することができ、より良いデータの動作を意識的に継続して行う。また個々の課題や目的別に、肩甲骨や股関節の可動域を広げるエクササイズや、体幹トレーニングを実施する。畝コーチは「ここなら1回崩してもいいからやっていこうというチャレンジができる。彼らにとってすごく良い時間になると思う」と説明した。

「2・5軍」で練習を続けてきた島内が6月中旬に“卒業生1号”になった。これまで一連の動作で投げていたフォームから、足を上げた際に「ワンテンポ置く感じ」と右足にためを作ってから投球動作に入る新フォームに挑戦。「コントロールしやすくなったし、しっかり体重移動をすることができてきた」。9日の2軍練習試合オリックス戦では自己最速の157キロを計測した。課題としていたカットボールも手首の角度やリリースポイントの高さを修正。有効なカウント球として技術に磨きをかけた。現在は2軍に所属し、1軍昇格を目指している。

松田オーナーの「1人の選手に対して、真剣に向き合っていくこと」という思いで始まった「2・5軍」。目指すところはもちろん1軍の舞台での活躍だ。畝コーチは「少しずつですけど、結果が出てきているところもある。早く1軍で活躍できる投手をどんどん増やしたい」と力を込めた。新育成のカープに注目だ。

◆島内颯太郎(しまうち・そうたろう)1996年(平8)10月14日生まれ、福岡県出身。光陵-九州共立大から18年ドラフト2位で広島入団。1年目の昨季は25試合に登板し0勝0敗0セーブ、防御率4・40。180センチ、83キロ。右投げ右打ち。