キャプテンがエースを援護した。巨人坂本勇人内野手(31)が、決勝の2号ソロを放った。0-0で迎えた6回1死、中日大野雄の低めのスライダーを左翼席へ。見逃せばボール球で、坂本のセンスが詰まった技ありのアーチだった。前回カードのDeNA戦は3戦連続無安打。試行錯誤を重ね、ここぞの一振りで試合を決めた。

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体に向かいながら、沈むスライダーに、坂本は最後は左手1本でバットに乗せるように、角度をつけた。メジャーリーグで脚光を浴びる「バレルゾーン」。長打になりやすいとされる打球速度と角度の組み合わせを意味する。カーブなど球速が遅く、さらにタイミングを崩されれば条件を満たすのは難しいとされるが、右足を軸とした回転力とリストの強さ、うまさで左翼席最前列に運んだ。

プロ通算382本塁打の原監督をも「難しいボールだと思います。投手としても、失投ではなかったのではないかなと思います」とE難度に指定したボール。高度な技術に度肝を抜かれ、沸き上がるチームメートのエアハイタッチに応えながら、心の中では「ピッチャーが頑張っているんでね。何とか先に点を取ってあげたかったので、1点とれて良かった」と好投するエース菅野を思った。

エースとキャプテン-。名門の看板を背負いながら、チームの勝利と成績を求められる2人だが、坂本は去年、菅野の本当の重圧を肌で知った。昨季はキャリアハイの40本塁打をマーク。主将就任後初となるリーグ優勝を達成し、喜びにみちあふれたオフのはずが、真っ先に浮かんだのは“恐怖心”だった。

坂本 来年40発打てなければ、30発でも成績は落ちたとみられる。でも、智之(菅野)は毎年そんな感じ。2年連続沢村賞の重圧は相当なもの。智之のすごさと大変さがわかった。

昨オフ、菅野との食事の席で本音を明かし、苦悩と今季への思いを共有した。2度のインフルエンザ発症、開幕前には新型コロナウイルス感染で迎えたシーズン。前回カードのDeNA戦では3戦連続無安打も、同学年の宮崎と打撃論をかわし、打撃練習では右足にチューブを巻き、打撃フォームの修正を重ね、不振を脱した。「日本一になって、銀座パレードしたいな」。重圧を乗り越え、願いをかなえる。【久保賢吾】