決勝打は絶好調の阪神選手会長、梅野隆太郎捕手(29)だ。8回に福留の適時打で3-3の同点に追いつき、なお2死一、三塁の場面。ゴンサレスの初球、外低めに入ったチェンジアップを迷いなく振り抜いた。「集中力だけは持って、打席に入って、どんな結果でも恐れずに初球から打とうと決めていた」。逆転成功の左前タイムリーに、ベンチは総立ちのガッツポーズ。ノリノリの打線は代打中谷と近本にも適時打が飛び出し、1イニング5得点で勝利を決定づけた。

2回と7回は右前打を放ち、5打数3安打で今季2度目の猛打賞。打率3割3分7厘はチームトップ、リーグ5位の好成績だ。強肩バズーカ捕手は、開幕からバットも振れている。「どんな形であろうと、全力疾走だったり、凡打になったところでも一生懸命やっているところが、いい意味で返ってきている」。いい当たりでもアウトになれば悔しがり、ボテボテの当たりでも最後まで諦めない。全てにひたむきな姿勢が、好結果に直結している。

小さなファンも大事にしている。前日25日の試合前、スタンドに近本のユニホームを着た女の子を見つけると、自身のバットを手渡した。「これ試合で使ってて、ひび入ってるバットだけど、よかったら」。女の子は驚きながらも笑顔で大喜び。周囲も温かい拍手と歓声で包まれた。

「自分が開幕からずっと試合用で使ってたバットが、ちょっとヒビ入ってしまったんで、誰かそれで喜んでくれたらと思って。野球選手は、なにか人が喜んでもらえるようなことが出来たらなと」。近くにいた誰もが、心温まる思い出になったはず。頼れる選手会長がグラウンドの内外でみんなを喜ばせる。【磯綾乃】