虎のリードオフマン復活だ。阪神近本光司外野手(25)が6試合ぶりにスタメン復帰し、今季初の4安打固め打ち。昨季のセ・リーグ新人最多安打から一転、打率リーグワーストに沈む男が、2本の適時打などで逆転勝ち&3位再浮上を導いた。

チームは前回3タテを食らった敵地中日戦に勝ち越し、7カード負け越しなしで再び貯金1。首位巨人猛追は、輝きを取り戻した背番号5が引っ張る。

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近本が4度の快音で復調を告げた。1点を追う8回に打線が逆転。3点差に広げてなお2死一、二塁の場面。ゴンサレスの外角低め143キロを力強く引っ張った。「チームの流れ的にもいい流れで点を取って回ってきたので。その流れで来た球だけを打ちにいく感じでいきました」。鋭く一、二塁間を破るダメ押しタイムリー。ベンチに向け笑顔でガッツポーズを作った。

昨季は長嶋茂雄超えの159安打でリーグ新人最多安打記録を更新。だが今季は一転、開幕から苦しんだ。試合前までの打率は1割9分4厘でリーグワースト。不振で19日の中日戦を最後にスタメンを外れ、6試合ぶりの先発復帰だった。

だが久々のスタメンも力むことなく「自分の良さを出していこう」と、自然体で試合に入った。「ファーストストライクを打ちにいけたのが良かった。今年はあまり打ちにいけていなかったし、振りにいけてなかったので」。初回の中前打は初球を捉え、5回の適時打はカウント1-0からの2球目を中前に運んだ。中前打を放った7回の打席も、3球目のファーストストライクをファウル。4安打全てで積極的なスイングを仕掛け、結果につなげた。

開幕から調子が上がらなくても、全てに前向きに取り組んできた。コーチ陣からのアドバイスにも耳を傾け、「ちょっとずつ体も動くようになった。いろんな周りの方に教えてもらって、それが一番よかったのかな」と感謝した。がむしゃらにバットを振り、必死に復調の糸口を探してきた。

引っ張り傾向にあったが、この日は中堅方向に3安打。矢野燿大監督は「センター中心に打っていく中から、逆方向もというのがチカの持ち味。中身も、いい形になってきている」とうなずいた。6試合に及ぶスタメン落ちも「(本人が)感じるものもある。相乗効果というか、チームがずっと競争と言っている中で、そういうのも気持ちの中にあるんじゃないかな」と力に変えた姿に目を細めた。

チームは前回3タテされたナゴヤドームで勝ち越し、7カード連続負け越しなしで3位に再浮上。首位巨人も勝って4・5差はそのままだが、近本の復活は大きい。週明けはAクラスを争うヤクルト&DeNAと6連戦。近本の大暴れに乞うご期待だ。【奥田隼人】

▼近本の1試合4安打は今季の個人ではチーム初。自身最多タイで、19年7月30日中日戦、8月4日広島戦に続き3度目。

▼近本のマルチ安打は今季5度目。6月23日ヤクルト戦2安打、7月4日広島戦3安打、14日ヤクルト戦2安打、19日中日戦2安打以来。この5試合でチームは全勝だ。