ソフトバンク石川柊太投手(28)が、プロ初完投を初完封で飾った。6回に許した1安打のみで、自己最多となる13奪三振。リーグ3連覇を狙う西武強力打線の1番から5番まで「マルチ三振」を奪い、自身18年から続く連勝を9に伸ばした。チームにとっても今季初完投で、首位固めを予感させる完勝劇となった。

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最後は自慢のパワーカーブを選んだ。石川が最後の力を振り絞った「最強変化球」が甲斐のミットに収まって見逃しの三振。わずか1安打のプロ初完投初完封のフィナーレに、育成出身同士、甲斐捕手とマウンドでほほえみ合った。

石川 自分の力ではありません。(甲斐)拓也の力も、トレーナーさんの力も、ファンの力もあって、みんなの力で投げきることができました。

初回から飛ばした。2回の3者連続三振を含め5回までに7奪三振。6回に初安打は許したが、7回は山川、外崎、中村のクリーンアップから3者連続の空振り三振を奪った。前回の西武戦(メットライフドーム)では4回途中6失点。その借りは1番から5番まで、すべて2三振を奪う快投で返した。

自分を追い込むことで成長できた。「面倒くさいことをしっかりできるようになった」。寝る前のプロテイン摂取や湿布を貼るなどのケアをサボらなくなった。さらに、「いつも相手にホームランを打たれるイメージを持って対戦する」。最悪のイメージから入って、そうならないためにどうするかを考えてマウンドで投げ続けた。「三振は取れたらラッキーくらいです」。三振の山を築いても決して気持ちは緩めない。

「自分に甘えないことです」。8回を投げ終わったところでベンチで工藤監督から「完投するか?」と聞かれ、18年4月19日楽天戦(ヤフオクドーム)で8回1/3で負け投手となったことを思い出した。「完投できなかったことは覚えている。悔しかった。できればいきたいと言いました」。最後までムチを入れて投げきった。

13奪三振での1安打完封劇は長い球団の歴史でも初めての快挙。ダイエー時代に「12K1安打完封」を経験している工藤監督も「100点満点。悪いところがひとつもなかった。今年一番、楽なゲームだったかも」と最敬礼だ。育成出身の右腕は「次が大事になりますね」と気合を入れ直した。「甘え」から卒業した右腕に怖いものはない。【浦田由紀夫】

▽西武スパンジェンバーグ(1番起用で石川から唯一の安打)「今日の石川投手は彼のリズムで投げることができていたのが良かったんだと思います。変化球できちんとストライクも取れていました」

◆石川柊太(いしかわ・しゅうた)1991年(平3)12月27日生まれ、東京都出身。総合工科から創価大を経て、13年育成ドラフト1位でソフトバンク入団。3年目の16年に支配下へと昇格した。185センチ、86キロ。右投げ右打ち。今季年俸は4800万円(推定)。