優男が初っぱなから鬼と化した。楽天内田靖人内野手(25)が1回、ロッテ種市から5号満塁弾を放った。島内の先制中前適時打から、なおも2死満塁。ふさふさのあごひげに、鋭い目つきで打席へ。1ストライクから2球目。真ん中高めのスライダーをしばき、バックスクリーンへたたき込んだ。2試合連続のスタメン起用に連発で応えた。

「バナナあるよ」「誰がゴリラや!」。日常茶飯事にいじられる、心優しい25歳。温厚な性格で「うっちー」と呼ばれ、親しまれる。三木監督も「素晴らしい人格者で本当に優しい。野球をしてなかったら仲良くなって友達になりたいくらい」と笑う。

ただ、弱肉強食が当たり前のグラウンドでは、時に優しさがあだとなる。18年に12本塁打も昨季は2試合出場のみ。昨年7月。当時の三木2軍監督から、泉練習場の監督室に呼ばれた。「生まれ持った優しさは大切にしてほしい。だけど野球を仕事として勝負をしている。ユニホームを着た時は優しさが出ないように」。敵はもちろん仲間も蹴落とさなければ、縄張りは張れない。「今年は強い気持ちでやれている。それがいい結果につながっている」。加えて「打撃を探求、研究して極めよう」と助言を受け、真摯(しんし)にバットと向き合った。

2戦連発は自身2度目。前回の2発目は18年9月17日。同じZOZOマリンでロッテ種市から2ランを放ち、黒星をつけた。「2年前に打ったのは覚えていますが、それから対戦がなかった。初対戦の気持ちでいきました」。生き残りに温情はいらない。21歳の右腕をどん底へ突き落とした。【桑原幹久】

▽楽天三木監督(内田に)「1打席目でしっかり準備して入れて、ファーストスイングではじき返せたことはよかった。ただ、残りの打席はもうちょっと頑張ってほしかったかな」