超人のド派手復活で14安打10得点の大勝だ。右膝痛を抱えている阪神糸井嘉男外野手(39)が、2番で6試合ぶりにスタメン復帰即、初回先制の口火となる激走三塁打など猛打賞。3安打が2カ月ぶりなら、適時打自体も1カ月ぶりのお目覚めだ。新人森下に2安打完封された一夜明け。阪神移籍後8月を最も得意とする夏男が、負ければ5位広島に0差に迫られる危機を救い、大逆襲に弾みをつけた。

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満身創痍(そうい)でもスピードは緩めない。気合の入った初回1死の第1打席。糸井は大瀬良から放った打球が右中間で大きく跳ねるのを確認すると、二塁を蹴った。背番号7の躍動を待ちわびた虎党の声援を背に、一気に三塁に滑り込んだ。ボールがそれると、本塁を狙おうかという前傾姿勢。超人の激走チーム初安打が、大量14安打10得点大勝の流れを作った。

「チームが勝って良かった。それだけです。西、ナイスピッチング!」

3打席全てで仕事を果たし、5回でお役御免の途中交代。ベンチからナインに声援を送り、快勝を見守った。陰のヒーローは試合後、自らの活躍に言及することなく、8回を投げ抜いた先発西勇をたたえた。

万全ではない体を必死に動かした。右膝に痛みを抱えながらの出場が続き、2番右翼で6試合ぶりのスタメン出場だった。初回は激走で今季初三塁打を決めると、3番サンズの適時二塁打で先制のホームイン。3回も1死から左前打で出塁し、5番ボーアの適時打で3点目の生還。5回無死二塁では、約1カ月ぶりの適時打を中前に運び、再びボーアの適時打で5点目のホームを踏んだ。2カ月ぶり2度目の猛打賞&3得点。前日森下に2安打完封負けしたチームを、ガッツあふれるプレーで勇気づけた。

プロ18年目。ベテランの域に達した今もなお、第一線で活躍を続ける。体のケアは欠かさず、睡眠の質向上に、枕は老舗寝具メーカーでオーダーメード。遠征先にも持ち運ぶ。鍛え上げられた肉体とは裏腹に、食事制限を設けることは少ない。あくまで「好きなものを食べる」超人流でストレスを軽減し、夏バテも予防している。

決して本調子とはいかない中で、圧倒的な存在感。頼もしい復活に矢野監督も目を細めた。「コンディションも何とかやりくりしていたし、打つ方の状態も上げようとやってくれていた。3本打った後に代えられるのは、あいつの中では不本意かもしれない。でもああいう打撃をしてくれて、またチームの力になってくれると思います」。負ければ5位広島に0差に迫られた危機で、チームを救った。8月は阪神移籍後、通算打率3割7分5厘と断トツの好成績。大逆襲へ、夏男の活躍は欠かせない。【奥田隼人】

▼糸井の猛打賞は6月21日巨人戦での3安打に続き、今季2度目。阪神での猛打賞は通算25度目。

▼糸井は阪神移籍後、8月は通算打率3割7分5厘と断トツの好成績だ。今季もこれで20打数6安打、打率ちょうど3割に乗せ、本領を発揮し始めた。