ヤクルト小川泰弘投手(30)の表情がやっと変わったのは、27個のアウトを取り終えた後だった。ノーヒットノーランを達成し、ガッツポーズで抱きつく捕手西田と、ベンチから駆け寄ってきた青木、山田哲らのウオーターシャワーをうれしそうに浴びた。「おめでとうと、たくさん言っていただきました」と喜んだ。

最大のピンチは8回。先頭の倉本に四球、続く中井の遊ゴロを二塁手広岡が捕球ミスし、併殺になるはずの当たりがピンチを広げた。無死一、二塁。マウンドで、帽子をとって謝る広岡の肩をポンポンとたたいた。「切り替えて、ということは伝えましたし、自分自身も、変わらず打者と勝負できたと思う。動じずに攻めていけたと思います」と揺るがなかった。代打嶺井から直球で空振り三振、神里を右飛、柴田を遊ゴロで打ち取り、無失点でしのいだ。

序盤に打線の大きな援護もあったが「気持ち的には、変わらずに投げられた。それがいい結果につながったと思う」と振り返った。

今季最長の5連敗を喫しており、ミーティングでは「攻める」ことを全員で共有した。試合前の円陣では、コーチ陣だけでなく高津監督も前に立って話すなど、異例の流れで勝利を引き寄せた。その立役者は、間違いなく小川。「打者1人1人に集中できていたところが1番良かったと思う。チームのミーティングでも、しっかり攻めていくという話があって、ストライク先行でしっかり攻められたことがよかった」。チームの連敗を止め、快挙を達成。小川の強さが光った。