日本球界に新たなスピードスターの誕生だ。ロッテ和田康士朗外野手(21)が16日、日本ハム戦で「1番中堅」でプロ初スタメン。初回にプロ初安打を放つと、いきなり盗塁し、その後生還。3回、5回にも全く同じ流れを繰り返した。50メートル5秒8の俊足を存分に生かし、3安打3盗塁3得点で勝利に貢献する、満点スタメンデビュー。盗塁数を12個まで増やし、一気にリーグトップタイに到達した。

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食欲も出ない初スタメンの緊張を、和田は初回、プロ初安打で吹き飛ばした。「直球一本でした。うれしかったです」。さぁ、見せ場はここからだ。2番中村奨の初球、いきなりスタートを切った。

ZOZOマリンに信じられない音が生まれた。和田が塁間約27メートルの半分にも達しない時点で、何人ものファンが手をたたいた。スタートへの興奮か? いや、結果を悟っての“確信拍手”だ。余裕のセーフの後、中村奨の犠打、井上の適時打で生還した。

時を戻そう-。3回、また安打で出塁する。走る前から、ファンがマリン新名物“アレグロ拍手”で盗塁をせかす。また初球から走ってセーフ。「走塁用の手袋も替えました」。汗が影響しないよう、細心の注意で見せ場へ挑んだ。また中村奨の犠打で進み、安田の犠飛で悠々生還した。

2度あることは、の5回。また安打で出塁。日本ハム・バーヘイゲンも3度、けん制を入れてきた。めげずにまた盗塁。今度は惜しくもアウト…と思いきや、リクエストで覆った。セーフと分かった瞬間、球場中に93デシベルの拍手が響いた。中村奨の犠打で三たび送られ、内野ゴロで果敢に本塁突入。また生還した。

1番打者の理想を、プロ初スタメンの若者が2度も再現したのが驚異的だ。井口監督も「期待以上の働き。何とか塁に出れば、確実に盗塁してくれる」と興奮。活躍の場はますます増えそうだ。「スタメン定着? それは欲張りすぎかな。1軍にいられるだけでも」と照れて謙遜している場合ではない。混パの突破へ、走れ、コウシロウ。【金子真仁】

◆和田康士朗(わだ・こうしろう)1999年(平11)1月14日、埼玉県東松山市生まれ。埼玉・小川高では都幾川倶楽部硬式野球団に所属。BC・富山を経て、17年育成ドラフト1位でロッテ入団。昨季は2軍でリーグ2位タイの23盗塁。今季開幕戦(6月19日ソフトバンク戦)で代走起用され1軍デビュー。185センチ、77キロ。左投げ左打ち。