阪神大山悠輔内野手(25)がヤクルトの新外国人クックを素早く料理した。初回に10試合ぶりとなる先制3ラン。試合開始わずか6分の放物線が、V打になった。前夜にはボーアが来日初の2本塁打。虎の主軸に復調の兆しが見え、3カードぶりの勝ち越し。借金を「2」に減らし、勝率5割が見えてきた。

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大山が力強く踏み込んだ。ヤクルトの新外国人クックが投じた外角直球を強振。打球は放物線を描き、右翼席ギリギリに着弾。「しっかり強く打つことができました」。初回、試合開始6分の先制3ランで試合の主導権を握った。終盤に猛烈な追い上げを食らったが、この1発が利いていた。

10試合、42打席ぶりの12号が決勝打になった。

前日21日は7番に降格したボーアが来日初の2本塁打と大暴れ。藤浪の692日ぶり勝利もあった。7月から4番に定着していた大山も打撃の急降下で、8月20日の巨人戦からサンズに4番の座を譲っていた。降格後3試合で13打数5安打と、意地を見せた。矢野監督も「相手にダメージを与える得点になった」とたたえる。猛虎の復活祭は続いていた。

今季の春季キャンプで、大山は三塁を争うマルテと、毎日のように早出特守を行っていた。「いつも朝早くから体を動かしているが…」と問われると、即答した。「『頑張っている』と言われている時点でダメだと思います」。プロとして頑張るのは当たり前。早出特守で話題にされることがもどかしかった。

いつも特別なことをしているわけではない。好調時でも不調時でも、井上打撃コーチや矢野監督と打撃を見直す。一流を目指す野球人として、向上心を日々持ち続けている。この積み重ねが試合に生き、打撃の波も再び上り調子になった。「今年は結構、右方向にホームランが出ている。1発で初対戦のピッチャーを仕留めてくれたというのは中身もあったと思う」と指揮官も成長を認めた。

大山の一打を号砲に、打線は2試合連続2ケタ安打と勢いを取り戻した。巨人戦の3試合連続完封負けという嫌な流れを完全に断ち切り、3カードぶりの勝ち越しを決めた。「明日も頑張ります」。借金を「2」に減らし、勝率5割復帰が見えてきた。主軸の復調は反撃への明るい材料。大山のバットとともに、チームも波に乗っていく。【只松憲】