ロッテ大嶺祐太投手(32)が約3年2カ月ぶりに、1軍のマウンドに立った。

初回、西武金子にいきなり146キロ直球でストライク、148キロ、149キロと勢いを増し、最後は内角149キロで空振り三振を奪った。「手術して、痛いところもないので、全力で腕を振ってチームに貢献したいです」。8月下旬、支配下選手に復帰した時の意気込みを表現するような、直球勝負だった。

19年1月、プロ12年目のオフに右肘のトミー・ジョン手術を受けた。約1年に及ぶリハビリを乗り越え、今がある。「いろいろな人がリハビリに携わってくれて、そのおかげでマウンドに立てます。感謝の気持ちを持って、マウンドに上がりたいです」。思いを口にするたび、そこに「感謝」の2文字を入れた。

白星は、今夜は少し遠かった。2回まで無失点も、3回に山川の3ランなどで5失点。初回の直球平均球速147・1キロは、3回には145・3キロまで落ちた。井口監督も「威力もキレも良かったですけど、ちょっと球速が落ちて、高めに浮いたところをやられたなと」と総括。5回7失点で黒星がついた。

西武打線に真っ向勝負を挑みながらも、テーマの「感謝」は忘れなかった。ベンチ前で帽子を脱ぎ、神妙な面持ちでマウンドへ向かった。内野陣からの声掛けに何度も感謝し、会釈で応えた。

5回には先頭栗山に大飛球を打たれた。中堅の加藤翔平外野手(29)がフェンスに激突しながら好捕し、大嶺を助けた。初回の球威は戻らず、5回表は2安打2四球1失点。3アウトまで15分間の長い攻撃を受け、少しうつむきながらベンチへ。しかし加藤がベンチ前へ戻ると、大嶺は笑顔になり、2度手をたたいた。この日の仕事の最後も、感謝で締めた。

降板後は「チームの状態も良い中で、こういう結果になってしまい申し訳ないです」と結果を悔やんだ。ここからまた立ち上がる。大嶺には、今後同じ手術を受ける人たちにとっての「希望になりたい」という願いがある。井口監督は来週も先発で起用する方針。今度こそ、ファンに肉声で感謝を伝えたい。【金子真仁】