巨人の長旅が終わり、ライバルとの勝負付けは済んだ。本拠地での阪神戦に完敗、連勝が9で止まった。12年前の08年、同じ9月。12連勝を記録し、最大13差あった阪神との差を一気に詰め、大逆転優勝の布石としている。データの徹底比較と当時を知る担当記者の回顧から強さの中身に迫る。

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08年9月の12連勝中、打っては勝ち、勝っては原稿を書きまくった。「今日は誰が?」。プロ野球記者1年目。攻撃中のドキドキ感が忘れられない。13試合計96得点で、1試合平均は驚異の7・4点。31本塁打を量産した破壊力の記憶は強く残っている。

最大のサプライズは9月24日の広島戦だった。前日の延長12回にリリーフした東野が、中0日で先発。メンバー表を見た広島ブラウン監督が発した「アンビリーバブル…」から約3時間40分後。平成で3人目となる「登板翌日の先発、完投勝利」が生まれた。

出番に飢えた若武者たちが、死に物狂いで臨んでいた。ブルペンを支えた山口と越智は真顔で言った「毎試合、これが最後かもしれない、腕が飛んでもいいくらいの気持ちで投げる」の迫力に身震いがした。

干支(えと)が1周し、巨人は再び9月に大型連勝を重ねた。あの時との違いは…スコアブックを開くと、ある数字に驚いた。

連勝が始まったのは、5日の阪神戦。11-2で大勝した。雨天中止を挟んだ7日の同戦へページをめくる。目についたのは赤字の「S」。デラロサ5、高梨2、中川1と8試合連続でセーブを挙げた。最大13差。阪神を猛追した08年のような高鳴りは少ない。先発2・51、救援2・39の防御率が「最後は勝つ」の安心感につながっている。

何より、開幕11連勝の菅野がいる。9連勝中も2勝。「究極のエース対決」と称された中日大野雄、ポテンシャル抜群の阪神高橋に投げ勝ち、38年春のスタルヒンの球団記録に並んだ。

阿部チルドレンの躍動で沸いた翌日、連勝は9で止まった。2位から猛烈にまくった12年前の白星街道とは状況も中身も、裏打ちも違う。ただ、変わらない太い芯がある。原監督と坂本の存在感だ。【久保賢吾】

 

◆08年の12連勝との比較 08年は13試合(1分け含む)で96得点43失点で、期間中の平均得点は7・4点。阿部が7本、李承ヨプが6本打つなど、13試合でチーム31本塁打と打線の爆発が連勝を支えた。一方、今年の連勝期間は10試合(1分け含む)で46得点25失点。平均得点4・6点は08年には劣るが、失点は平均2・5点に抑えている。失点が少ないだけ接戦の展開が多く、10試合中9試合が3点差以内。そのうち5試合が1点差での勝利と、僅差の試合を勝ち切っている。期間中の防御率を見ても先発2・51、救援2・39とどちらも優秀で、接戦に強い投手陣の活躍が連勝につながっている。

 

※李承ヨプのは火ヘンに華