猛虎の意地だ。阪神が14安打11得点の猛攻で、開幕からの東京ドーム連敗を8で止めた。主役は1番近本光司外野手(25)だ。初回の開始13秒、プロ初の初球先頭打者弾で序盤の5得点を導くと、6回にも中押しの7号ソロ。巨人戦3戦4発の奮闘でマジック減らしを停滞させた。首位とは10・5差あるが、目の前の1戦1戦を勝つしか道は開けない。残り45試合、ネバーギブアップで戦い抜く。

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石山球審のプレーボールからわずか13秒。電光石火の近本弾が右中間席に跳ねた。先発サンチェスの初球、150キロ高め直球に力負けせず振り抜いた。「コンパクトにスイングすることを強く意識して、打席に入りました」。6号ソロはプロ初の先頭打者初球本塁打。先頭弾は今季3本目で、サンチェスからは開幕3戦目に続く2発目となった。

これ以上負けられない。近本の意地が詰まっていた。敵地に乗り込んだ首位巨人戦で力なく2連敗。目の前でマジック点灯も許し、今季東京ドームで開幕8戦8敗と巨人敵地で57年ぶりの屈辱を味わった。開幕9戦9敗なら球団ワーストに並ぶ一戦で、初回の一振りで打線を活気づけた。

遠征先でも愛する家族の存在が力になっている。新人年の昨年7月に第1子となる長女が誕生。守るべきものがまた1つ増えた。遠征中は毎日欠かさず電話で言葉を交わし、パワーをもらっている。仕事柄、家を長期間離れることも多く「(愛娘に)忘れられたらどないしようというのはありますね」と苦笑いすることも。パパの顔ものぞかせながら、グラウンドでは全力プレーに変換している。

1本では満足しない。5点リードの6回には桜井のチェンジアップを右中間席へ運び、この日2本目の7号ソロで中押しした。初戦の15日にもエース菅野から2発を放っており、今カードは3戦4発の大暴れだ。バットの握りを指数本分短く持つことで速球に対応。「しっかり捉えられるようにという意識」でジャストミートし、1発を量産している。先頭打者での出塁、得点に狙いを定め、ここ10試合の第1打席は10打数7安打で打率7割。うち6出塁で先制ホームを踏み、1番の役割を果たしている。

近本の2発が14安打11得点の猛攻を呼び、巨人の敵地でようやく今季初白星。矢野監督も近本の働きを絶賛した。「東京ドームでは(今季5本塁打で)相性もいいし、先制できたのも大きい。先制できて次入らないパターンも多かったけど2回もいけたから。勢い、流れをこっちにもって来られた」。まだ10・5ゲーム差と巨人の背中は遠いが、目の前の試合を勝っていくしかない。背番号5がその先頭に立ち、チームを引っ張っていく。【奥田隼人】