チームの緊急事態を救った。巨人畠世周投手(26)が6回2安打無失点と好投し、先発では17年9月17日以来、1099日ぶりの勝利を挙げた。当初予告先発だったメルセデスが、左肘の違和感で登板を回避し巡ってきたチャンス。原監督からの言葉を胸に、チームの連敗を3で止め、優勝マジックを32に減らした。

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以前の畠ではなかった。2回2死一、二塁、この日唯一背負ったピンチでも強気に攻めた。柴田にはカウント2-2から内角に食い込む142キロカットボールを1球見せ、最後は外角いっぱいの150キロ直球。見逃し三振に切った。

降格直前の8月22日広島戦では、2回1/3を5失点で3敗目を喫した。初回に鈴木誠に死球を与えて以降、内角を攻められなくなった。登板後スマートフォンが鳴った。原監督からのラインだった。「プロ野球選手として生きてて奥さんと子供さんを幸せにするのに、そんなんでびびっていては恥ずかしい。おれたちは特別な人間なんだ」とハッパをかけられた。

自宅に帰れば昨年に結婚した妻がいる。昨季は0勝に終わり、開幕ローテーション入りの期待がかかった今季も2月に右肩周辺の肉離れで離脱し開幕2軍スタートとなった。「暴れそうなほど悔しい時もあったんですけど支えてくださった。感謝しています」。やっと妻に恩返しのウイニングボールを手渡せる。

この日は当初、ジャイアンツ球場での2軍戦に登板だったが、予告先発だったメルセデスの登板回避でチャンスが巡ってきた。「悔いのないボールを1球でも多く投げよう」。失うものは何もなかった。そんな姿に原監督は「見ての通り。糧にしていたと思います」とうなずいた。

脱力フォームに取り組み、先発では3年ぶりの勝利を手にした畠は「やってやろうと。ずっと勝てなくて、悔しい思いをしてきた。1勝できてほっとしています」。先発投手で今季、連敗を止めたのは菅野以外では初。弱い自分はもういない。新たな1歩を踏み出した。【久永壮真】

◆巨人畠の死球VTR 今季初登板の7月31日広島戦(東京ドーム)の5回1死、会沢の頭部への死球で危険球退場した。4試合目の8月22日広島戦(マツダスタジアム)では1回に鈴木誠に死球を与えた後、内角を攻めきれず、3回途中5失点でKO。翌日に2軍降格した。