球児魂で超人復活だ! 阪神糸井嘉男外野手(39)が同点、決勝の2打席連続タイムリーで2連勝と今季最多タイの貯金4を導いた。右膝痛を抱えるベテランは10年ぶりの7番やスタメン落ちも味わいながら大奮闘。支えは、今季限りでの現役引退を発表した藤川球児投手(40)への熱い思いだ。首位巨人はこの日も勝ち、シーズン3分の2を終えて、残り40試合で10・5差は厳しい。だが憧れの鉄腕をミラクルVで送るために、超人も諦めない。

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頼もしい糸井が戻ってきた。「ここしかないという場面で打ててよかったです」。同点の8回1死二、三塁。狙っていたという石田の直球を振り切った。右中間で弾んだ打球は、前進守備の外野手間を破る決勝2点適時打。1万1307人の観衆の前で文句なしのお立ち台に上がり、「最高です!」と笑顔がはじけた。

独壇場だった。1点を追う6回1死一、二塁では、山崎から三遊間を破って同点適時打。4回の右前打と合わせ、38日ぶり今季3度目の猛打賞を左右に打ち分けた。2試合連続の3番スタメン起用に応え、2戦連続適時打。勝負強さ全開で超人復活をアピールした。

右膝痛を抱えながらプレーを続ける。思うような成績が残せず、出場機会も減少。日本ハム時代以来10年ぶりに7番に下がった試合もあった。「やっぱり悔しいし、自分自身を責める日もある。原因は分かっているんですけど、それを言い訳にしたくない。ちょっと諦めたりする自分もいますけど、そこは朝、また『よし!』と言ってやっています」。強い気持ちでグラウンドに立ち続けている。

励みは今季限りでの引退を発表した藤川の存在だ。パ・リーグ時代から熱い視線を送り「レジェンドクラスの選手、ボール」と憧れた。糸井も投手出身だけに「ああいうピッチャーに、どうやったらなるんやろなとかいろいろ考えて、練習してたこともあった」という。移籍後はそのバックを守る。「こうやって3年ないし4年、球児さんの後ろを守らせてもらって。そういうピッチャーの後ろを守れたっていうのは、すごい僕の中では財産です」。初めて明かした鉄腕への熱い思いが、体を突き動かす原動力になっている。

糸井の葛藤を思う矢野監督も、その執念をたたえた。「全部の気持ちを持って打席に立って、打ったということじゃないかな。嘉男にとっても、チームにとってもいい日になった」。チームは連勝で3カードぶりの勝ち越しを決め、貯金を今季最多タイの4に増やした。巨人はこの日も勝った。残り40試合で10・5差は正直、厳しい数字だ。だが逆転優勝こそ、藤川も引退会見で願った花道。糸井も諦めることなどできない。「明日も勝ちます!」。復活の超人が奇跡の扉をこじ開ける。【奥田隼人】