ドラフト候補の最速152キロ右腕・佐藤蓮投手(4年=飛龍)が、最後の打者を力強い真っすぐで見逃し三振に仕留め、19年春以来の優勝を決めた。マウンド上で笑顔でガッツポーズを作る佐藤のもとへ、選手たちが駆け寄り、あっという間に歓喜の輪が広がった。佐藤は「優勝投手になるのは生まれて初めて。うれしい。最高です」と笑みがはじけた。

DeNAなど6球団10人のスカウトが見守る中、10-0の7回、2番手で登板も、力みから真っすぐを痛打され2失点。コールドを逃すも8、9回はフォークで緩急をつけた。9個のアウトのうち8つを三振で奪った。最速は152キロ。ドラフト前最後の登板に「やりきれました」と安心した表情を見せた。

谷口英規監督(51)は優勝の要因に「4年生が先に動き、まとまってくれた」と話す。3月、コロナの自粛期間に入る直前。チーム全体を見直すために、新たに組織図を作成。各部、各班の仕事も明確にし、野球部の立て直しを図った。その中で、リーダーシップを発揮したのが4年生だった。

自粛期間を利用しグループごとに話し合いを深め、その内容をグループラインで共有した。主将の古川裕大捕手(4年=久留米商)は「1人1人が役割を見直すきっかけになり、チームファーストで行動できるようになった」と振り返る。今日の試合では、出場12人中、下級生はわずかに2人。ボールボーイ、ブルペン捕手も4年生が務めた。谷口監督は「いい4年生たちですよ」と優勝に沸く選手たちに温かい視線を向けた。

明治神宮大会は中止になったが、11月9日からは関東地区大学野球選手権が行われる。谷口監督は「上武大ここにあり、という戦いをしたい。そして、この4年生に少しでもいい思いをさせてあげたいですね」と胸に誓う。1試合でも多く、この仲間たちと戦いたい。チームをひとつに、優勝を狙う。【保坂淑子】