矢野阪神がV逸目前から執念の5連勝を飾った。初回に糸原健斗内野手(27)の同点タイムリーなどで45回連続無失点中の中日大野雄から2点をもぎ取り、逆転に成功。3回に1点を挙げ、難攻不落の左腕を攻略した。負ければ15年連続のV逸が決まる土壇場で見せた猛虎の意地で2位に浮上した。

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重くのしかかるはずの記録を意識する間もなく、虎が難攻不落の中日大野雄を攻略した。1点を追う1回裏、1番近本の右前打で無死一塁。2番糸原が4球ファウルで食らいついた後、カウント2-2から甘く入ったフォークをコンパクトに強振した。大歓声をBGMに、飛球が右中間最深部を破っていく。首脳陣の強攻策に応え、同点の適時二塁打を決めた。

糸原 チカ(近本)が塁に出てくれましたし、自分も次の打者へつなぐ気持ちで打席に入りました。同点に追いつくことができて良かったです。

相手は今季4試合で防御率0・91に封じ込められていた天敵。たった2人で、わずか10球で、大野雄に46イニングぶりの失点をつけて勢いに乗った。3番マルテの三遊間へのゴロに二塁走者糸原が反応し、間一髪で三塁を陥れる。無死一、三塁となり、4番大山が遊ゴロを転がす間に勝ち越しの2点目をゲット。左腕の出ばなを一気にくじき、今季最長タイの5連勝につなげた。

大野雄はプロ野球史上9年ぶりの45イニング以上連続無失点。前回の日本ハム・ダルビッシュを46イニング連続無失点で止めたチームも虎だった。11年6月15日の甲子園。3回2死三塁から暴投の間に47イニングぶりの失点で、黒星も記録。今回も同じように黒星までつけさせ、矢野監督は「立ち上がりで2点を取れたというのは大きい」と納得顔だ。

貯金を今季最多の5に増やし、10月13日以来の2位に浮上。指揮官は「今シーズンも苦しい時期もたくさんあった。みんな全員でやるというところで諦めずにやり切ってくれているというのが、こういうところにつながっている」とナインをたたえた。負ければV逸決定という窮地から5連勝。残り9試合、猛虎の意地を体現し続ける。【佐井陽介】