巨人菅野智之投手(31)が、2年連続で日刊スポーツに手記を寄せた。昨年のリーグ優勝は腰痛で離脱。悔しさを乗り越え、エースの活躍で連覇に貢献した。開幕前、原監督から課せられた使命とは-。開幕13連勝の中、巨人の未来を背負う2人への思いも込めた。

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今、この場に立っていることが素直にうれしい。ケガで離脱した去年は悔しさが強く、「うれしいと思わないといけないんだ」ともう1人の自分が心の中にいた。自分ももう10月11日で31歳になった。周りを見れば、僕より若い選手が本当に増えた。かわいくもあるし、心配でもある。

使命感を感じながら、接した2人がいる。投手では戸郷、捕手では卓三(大城)だ。シーズン前、原監督から「卓三は慎之助のようにスケールの大きな捕手になれる可能性がある。育ててやってくれないか」と言われた。大事なことを託してもらって、うれしかったし、責任を持ってやらなければとの思いが沸いた。

当然、卓三には厳しい目を向けた。今年、最初に組んだ6月26日のヤクルト戦。試合当日のミーティングだった。僕は前日までに映像を見返し、ノートに自分なりの考えを書くけど、卓三は真っ白なノートを開き、聞いた話を書くだけだった。その時は何も言わなかったけど、試合後に卓三を呼んだ。

「打たれたのはオレの責任だけど、バッターの傾向や特徴を頭に入れて、ちゃんと理解できてたか? もし、そうじゃ無ければ投手に失礼だよ」

あの日から本当に変わった。「これはどうですか?」と聞きに来たり、遠征で離れる時はLINEとかでやりとりして。でも、今年は卓三に何度も助けられている。鈍感力というか、変に余裕があって、ピンチの時も冷静で和ませてくれる。マウンドに来て「あれ、打たれたら無理っす」って。勇人さんは「無理ちゃうやろ。それを考えろ」と言ってますけどね(笑い)

戸郷にも思いを伝えている。鈍感力は良さの1つだけど、それだけじゃダメ。100勝を達成した時、あえて名前を出した。ああいうところで言うと本人も意識する。もちろん、ここまでの成績はものすごいもの。けれど、ジャイアンツのエースになるには、周りの目とも戦わないといけない。僕が言えばファンの方もそういう目で見るし、それが成長につながる。

ファンの存在の大きさもかみしめる1年でもあった。無観客でやってる時はつらかったし、「今、野球をやる必要があるのかな?」とも思った。でも、2万人近く入るようになって、スタンドを見た時に心から思った。「やってきて、良かったな」と。あの瞬間は一生忘れない。

連勝記録のプレッシャーは相当あった。やっぱり、チームメート、トレーナー、家族、ファン…。いろんな人の力があって、積み上げたものだったので「簡単に止めちゃいけない」と強く思いながら、マウンドに上がった。

周囲の評価はわからない。でも、今年の成績を見て、僕の中で満足できる数字は勝ち星だけだ。防御率で言えば、例えばロペスの1発(10月6日のDeNA戦)は防げたなとか、思うところがある。後付けの後悔だけど、それを無くすと良くはならない。どんな成績でも反省はする。

よく「原監督から言われた印象に残る言葉は?」と聞かれる。監督はいまだにあまり褒めてくれない。新聞で他の選手へのコメントとかを見るとジェラシーというか、それを力に変えてるってのもあるのかもしれない(笑い)。シーズンが終わったら、少しは褒めてもらえるのかな。

2年前、メジャーへの夢を口にした。いろいろなことは考えるけど、先のことはどうなるかわからない。もちろん、いつまでも夢を語れるわけではないし、いずれはケジメをつけないといけないと思っている。今、この瞬間の夢はジャイアンツの日本一。それしかない。(巨人投手)