志願の続投も実らず、巨人戸郷翔征投手(20)が、あとアウト1つでプロ初完封を逃した。

8回を投げ終えた時点で127球。「ぼくが行かせてくれということで。ライバルは(広島)森下選手ですし、そこを倒すためには僕も身を削って投げないといけない。そこの詰めの甘さが、今の結果になっているんじゃないかなと思います」。

新人王を争ってきた広島森下はすでに10勝を挙げている。ライバルに追い付き、追い越すために-。

戸郷が投じた139球目。144キロの外角直球を広島菊池涼に右翼席に同点2ランを運ばれた。

「最後の1球。完投につながらなかった。やっぱりそこの慎重さというのは、あらためて。前回の(DeNA)ロペスもそうですけど、そういうのを痛感させられました」

ドラフト6位で入団した高卒2年目。新人王という目標を堂々と口にして、広島森下に挑んできた。「僕の目標だった優勝もしましたし、残りのシーズンは自分のタイトルに向かって。みんなそうだと思いますけど、そこに向けて、僕ももう一段階、レベルアップしようと思って臨んだ試合だった。やっぱり、悔しさが一番です」。

志を持って続投を志願した若き右腕に、試合後、原監督が歩み寄った。肩を組んで耳元で言葉を掛けた。

「ナイスピッチングでした。まあ、糧としてくれるでしょう。しかし、いろんな意味で戸郷らしいピッチングができたというのはあります」と評価。続投の決断には「本人が強い意志があったからね」と続けた。

戸郷はプロ入り後最多の146球を投げて9回2失点。次週の火曜日、10日には甲子園で阪神戦が残されている。チーム119試合目。勝利しても自身9勝目。森下には届かない。それでも先発を志願する。胸の中には、宮本和知投手チーフ投手との約束があった。

「シーズン前から、最後も投げるというのも、一緒に言ってやってきたので。今日の勝ちを、自分もそうですけど、宮本さんにもつけさせてあげたかったというか。今まで支えてもらったので。その恩返しというか。完投したら投手陣ももっと楽になると思うんで。あの1球というのが、チームの勝ちも消してしまいました。あれが優勝の試合だったらと考えると。慎重になっていたら、結果が違ったと思います」

すべての経験を糧に、前に進む。「あともう1回投げられると思うので。そこに全力を出して、日本シリーズの先発の切符をね、つかめたらと思う」。