アマチュア時代を思い出せ! 阪神が15日、甲子園球場で秋季練習を開始した。21年シーズンへの出発日。選手への訓示で矢野燿大監督よりも長くゲキを飛ばしたのが、来季からヘッドコーチになる井上一樹打撃コーチ(49)だった。

3年連続で12球団ワーストの85失策を記録した猛虎再建には、野球少年のような元気と緊張感が必要だと熱血ワードを連発した。

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甲子園の右翼付近。練習前の円陣で井上コーチが、身ぶり手ぶりでチームへ訓示を行った。約5分超と矢野監督を優に上回った。首脳陣きっての熱血漢は、初日から熱かった。

「(選手たちは)おとなしすぎる。もうちょっとやんちゃになってもいい。お利口さんばかりでは野球はやれないと感じていた。来年はもう1回みんなでアマチュア野球に戻ろうやというのをしゃべった」

今季は打撃コーチとして就任1年目を全う。役職がヘッドコーチに変わり、チーム全体に目を配る。今季は85失策で3年連続両リーグワースト。メディアで取り上げられる明確な課題に「今年もいっぱい(メディアに)いじめられた。大阪の文化だから」と苦笑いだったが、再建策はある。

「みんなで一緒になって、1つのチームになって頑張ろうぜっていうときにスカすなと。スカしてる人間がいたらそれが害になる。みんなでテンション上げるんだったら、みんなで上げていく。それがエラーの削減にもつながると思う。『やろうぜー!』というテンションだったら最低同じレベルのテンションでこいと。『やろうぜー!』で『うーい』ではだめ。『いくぞー!』って言ったら『行きましょうかー!』っていうレベルでこいと言った」

矢野監督がうたう「楽しんで野球をする」チームに変わるための1歩。井上コーチはリトルリーグ、中学野球、高校野球のような「ナイスボール!」「なにやってんだ!」というナイン同士の言い合いを期待した。今年、リーグ優勝した巨人は43失策で阪神の約半分だった。

「練習の量に関して言えばジャイアンツに負けてない。じゃあ何が違うかといったら緊張感。常日頃から訓練が足りない。そういう意識をつけるのが俺の役目」

初日の練習は約2時間半と軽めだったが、その半分を守備に割いた。16年ぶりのリーグ制覇へ。井上ヘッドが熱く、厳しく虎を蘇生させる。【只松憲】

<15日の練習メニュー>

午後2時 ナイン集合。矢野監督、井上コーチらが訓示。

午後2時15分 ウオーミングアップの後、投手、野手に分かれてキャッチボール。

午後3時 二塁、遊撃、三塁、外野と4つの位置に4人ずつ分かれてノック。

午後4時 外野でランニングメニュー。練習は約2時間半。

○…井上コーチは来季のキーマンに近本、大山、梅野、木浪を指名した。その上で「何回もあいつらには言ってるけど『何しとるんだ!』っていうことを春から言う。ちょっと気の抜いたプレーがあったら、そこでガツンと言うような緊張感を持たすのが先決」と予告。さらに「レギュラー連中にそういった声をかけることによって、あいつらより若い連中がもっと真剣にピリピリする」と相乗効果を期待した。