DeNA井納翔一投手(34)が国内フリーエージェント(FA)権を行使することが16日、決定的となった。プロ8年目の今季は開幕からローテを守り17試合に先発登板。6勝にとどまるも、安定感は示した。今季途中に同権利を取得。すでに水面下で複数球団が調査を開始している一方で、交渉解禁日前までの独占交渉権を持つDeNA側は宣言残留を認める方針を明らかにしている。今日17日にFA権の有資格者が公示される。

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「ハマの宇宙人」が今オフの国内FA市場に出回る。身長188センチの長身右腕の去就に注目が集まってきた。プロ8年で168試合に登板し、通算50勝。一見、平凡な数字も150キロ超の直球、制球力が高いスライダー、落差十分のフォーク、近年習得したカットボールと投手としての質は球界で高評価を受ける。

大学、社会人を経てプロ入りし、34歳で迎えた今季の終盤で国内FA権を取得した。プロ1年目からプレーするDeNAへの愛着と感謝の思いは強い。一方で、三原球団代表が「選手たちが勝ち取ったものなので、権利なので悔いのない決断をしてもらいたい」と宣言残留を認めている。同権利を来季以降に持ち越したとしても年齢を考慮すると活用は現実的ではない。

日本シリーズ終了後のFA申請期間を待って行使への手続きへと進み、12球団との交渉が解禁される。今季は推定年俸6100万円で補償不要のCランクも他球団にとっては大きな魅力になる。残留交渉を進めるDeNA、獲得調査準備をしているヤクルトを含む、複数球団による争奪戦は必至な様相となる。移籍前提の権利行使ではないが、井納自身の評価が球界の市場価値として示される。

コロナ禍で特別なシーズンを強いられた球界だが例年通り、日本シリーズ終了を待って“FA戦線”が始まろうとしている。

◆井納翔一(いのう・しょういち)1986年(昭61)5月1日、東京都生まれ。木更津総合2年夏にチームは甲子園出場もベンチ外。上武大に進学し、関甲新学生リーグでは4年春秋に最優秀防御率を獲得。NTT東日本を経て、12年ドラフト3位でDeNA入団。1年目の13年から先発ローテ入りし、14年には11勝をマーク。16年は開幕投手を務めた。188センチ、94キロ。右投げ右打ち。