9回2死まで3投手でのノーヒットノーランリレーで、ソフトバンクが巨人に3連勝し、4年連続日本一に王手をかけた。先発マット・ムーア投手(31)が7回を無安打無失点で交代。8回モイネロ、9回森の必勝リレーで、巨人打線につけいる隙を与えなかった。9回2死から1安打を許したが、チームは日本シリーズ11連勝を飾り、プロ野球記録を更新。ポストシーズンは昨年から15連勝。このまま一気に頂点に立つ。

あと1人だった。9回2死から守護神森が巨人丸に中前へ安打を許した。続くウィーラーを二飛に仕留め、完封リレーで日本一に王手をかけても森は「2死からの安打は本当にくやしいし、申し訳ない」と、反省のコメントだった。8回のモイネロは巨人が4人も送り出した代打攻勢に2四死球を出しながら、アウトはすべて三振で奪った。

一番の立役者はメジャー通算54勝左腕のムーアだった。初回、遊撃牧原の送球ミスで無死二塁のピンチを背負うが、落ち着いて後続3人を打ち取った。最速154キロ、常時150キロ超えの直球を内角へ投げ込み、第1戦千賀、第2戦石川から続く剛球の流れで巨人打線をねじ伏せた。カーブ、チェンジアップも巧みに操った。「(無安打が続いていることは)自分では知っていた。あまり考えず1人1人集中して投げた。交代は監督が勝つための最善策として決めたこと」と無安打での交代よりもチームの勝利を喜んだ。

メジャーでは13年のレイズ時代に自己最多17勝を挙げ、その年の球宴には故障のため欠場した当時レンジャーズのダルビッシュの代替選手として出場した。本来なら今年は本拠地ペイペイドームで球宴が行われる予定だったこともあり「いい機会だから日米で球宴に出場したいよ」と目標にしていた。

シーズン中は6勝。7月から約2カ月、左ふくらはぎを痛め、ファームで調整を続けた。だが、復帰へ真摯(しんし)に練習に取り組む姿は最高の見本となった。スタッフが撮影したキャッチボール動画は、多くの若手が参考としてそれぞれの携帯電話に転送され保存された。7月19日に26歳の誕生日を迎えた田中に対し、サファテとともにバースデーパーティーを開いた。田中が「すごくいい人です」と話すように、その人間性でチームに溶け込んだ。小学生のころ米軍関係の仕事をする父の関係で沖縄に住んでいた親日家。完封リレーで最高の勢いで第4戦先発の和田へバトンを渡した。【石橋隆雄】