広島田中広輔内野手(31)が今季取得した国内フリーエージェント(FA)権を行使せず残留することが29日、分かった。2年を基本線に複数年契約を結ぶとみられる。昨夏に右膝を手術し、今季は遊撃レギュラーとして112試合出場と復活。その動向に他球団も注目していたが、選手会長としてカープ再建を支える道を選んだ。近日中に発表される見込み。

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田中広輔が早々に結論を出した。他球団もその動向に注目する中、FA申請期限日となる12月4日を待つことなく、広島残留を決断した。球界関係者の話を総合すると、FA宣言はせずに複数年契約を結ぶとみられる。リーグ5位からの巻き返しを期す佐々岡カープに、何よりの朗報が届くことになりそうだ。

選手会長1年目の今季は遊撃レギュラーとして112試合に出場し、打率2割5分1厘、8本塁打、39打点、8盗塁。リーグ7位タイの55四球を選ぶなど、持ち味のしぶとさも発揮。堅実な遊撃守備も含め、昨夏の右膝手術からの復活を強く印象づけた。

一方でチームは序盤から苦しみ、借金4の5位で20年シーズンをフィニッシュ。田中はV逸が決まった10月21日に「とても悔しい。難しい環境はある程度覚悟して、それでも何とかという思いでやってきました…」と懸命に言葉を振り絞っていた。選手会長としての責任感、覚悟も早期決断を促したのかもしれない

首脳陣からのラブコールが効いた可能性もある。シーズン終了後、佐々岡監督や河田新ヘッドコーチから直々に残留を熱望された。「これからも選手会長として引っ張ってほしい」「広輔が残って核になってくれないと話にならない」。先輩たちの熱意を感じ取り、カープ再建に懸ける情熱がさらに高まるのは自然の流れだった。

16~18年には押しも押されもせぬ主力としてリーグ3連覇に大きく貢献。もともとチームへの感謝、愛着は人一倍強い。「常勝軍団」の肩書を取り戻すため、選手会長が来季もカープの先頭に立って身を粉にする。