日刊スポーツ評論家陣がリレー形式で阪神に提言する「V奪回へのシナリオ」の第6回は桧山進次郎氏(51)です。

12球団ワーストの失策改善へ、「頭と体の準備を怠るな」と厳しく指摘。ミス撲滅には、技術以前に起こり得るさまざまな状況のシミュレーションが重要で、来春キャンプでの大改革が必要と力を込めた。

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来季の阪神は、12球団ワースト失策の改善なくして優勝争いできません。守備力向上は多くの評論家の方々も指摘していますが、僕はその中でも「準備を怠るな」と指摘したいと思います。プロなので、1軍選手の技術的な優劣は12球団ほぼ変わりません。ただ阪神の選手は頭と体の「準備」が足りない分、多くのミスを生んでいると感じます。

たとえば無駄な送球です。内野ゴロで併殺を狙いにいくまでは良いが、事前に打者走者が足が速いと頭に入っていれば、正面の強い打球でしか併殺は成立しないと考える。ボテボテの打球が来ても、同じように一塁に投げても間に合わないと判断する。なのに無駄な送球をしてミスをする。また、外野手は普段から悪送球を想定したカバリングがないので、悠々と先の塁を与えてしまうことになる。

守備の成否は、ほぼポジショニングで決まります。データのインプットは当然ですがスイングを見て、引っ張って速い打球が来そうとか、押されているから詰まった打球が来そうとか、追い込まれたからおっつけにくるとか、1球1球観察して、前後左右に守備位置を変える必要があります。風も1球1球変わるし、隣の守備位置との間隔はどれぐらいかとか、常に目配り気配りしてキョロキョロしないと。もっと守備に興味を持たないといけません。守備に興味を持てば、周りが見えだして自分から動けるようになりますから。

打撃優先で内野手が外野を守ったり、複数のポジションをさせていることも影響しているでしょう。でも広い甲子園をホームとしている以上、打って勝とうは非常に難しい。点が取れないのでつい攻撃重視に傾きますが、投手力を中心に守り勝つスタイルが阪神が目指す姿だと思います。点を取れないのは歯がゆいけれど、1、2点差で逃げ切り、ファンがドキドキしながら勝つ野球。でもこれが一番計算できる野球なのです。

打撃は自分の成績にはね返りますが、守備はチームの成績にはね返ります。一生懸命投げて捕手の狙い通り打ち取ったのに白星を消したり、チームを負けさせたり、みんなの給料、ひいては生活に関わってきます。でもしっかり「準備」していれば、勝ちにつなげることもできます。春のキャンプでどう意識付けを徹底していくか。量ではなく、状況判断をふんだんに盛り込んだ中身の濃い練習が必要です。巨人との一番の差は守備力の差。打撃優先のチーム作りをあらためて、優勝争い参戦を願います。