先発フル稼働宣言だ。阪神藤浪晋太郎投手(26)が16日、兵庫・西宮市内の球団事務所で契約交渉に臨み、5年連続減俸となる300万円減の年俸6000万円でサインした。今季は24試合登板で1勝6敗、防御率4・01。終盤には中継ぎも経験したが、来季に向けて「先発以外は頭にない」ときっぱり。完全復活へ、5年ぶりの規定投球回到達を最低限の目標に掲げた。(金額は推定)

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会見の最後、藤浪は金銭面の話題をさらりと受け流した。

「もちろんプロ野球なので給料をもらえるに越したことはないですけど。別にお金が欲しくて野球をやっているわけではないので」

15年オフに1億7000万円までアップした年俸が今オフは6000万円。5年連続減俸に悔しさがないと言えばウソになるが、気分を沈めている暇もない。

「自分の中では先発以外は頭にない。しっかり先発で勝てるような選手になっていきたい。(今季)最後の方に良かった感覚を来シーズン、数字として表せられるように、数字で体現できるようにしたい」

来季の完全復活へ、力強い言葉が続いた。

激動の1年だった。3月下旬に新型コロナウイルス感染で一時離脱。6月には右胸の痛みで調整に狂いが生じた。それでも8月21日ヤクルト戦で692日ぶりの復活星をマーク。チーム内のコロナ禍で9月下旬に1軍緊急昇格後はブルペンに配置転換され、球団最速162キロを計測するなど本来のすごみを取り戻した。

計13試合の中継ぎ登板で失点は2試合のみ。「いい経験になった。勉強できた」。10月下旬に先発復帰後は計15イニングを自責点0と復調を印象づけた。ここ数年苦しみ続けた「制球難」というレッテルも剥がし始めている。

すでに矢野監督からは来季先発スタートを明言され、「縦スラ」習得指令も受けている。オフはウエートトレ、体幹トレ、ランニングに加え、ブルペンで「キャッチボール程度」の投球も継続。シーズン終盤につかんだ手応えをさらに進化させ、来季こそフル稼働を狙う。今季セ・リーグで6人しか達成できなかった規定投球回到達さえ、通過点だ。

「目安となるのはイニングかな、と。(球界全体で)あまり先発完投がなくなってきている。その中で、ちょっとでもイニングを長く投げていけたら。(規定投球回は)最低限の目標にしたいですし、そこからどれだけ積み重ねられるかだと思います」

自身5年ぶりの規定投球回到達から覚醒へ。まずは黙々と復活ロードの整備を進める。【佐井陽介】

【年俸推移】阪神藤浪、1・7億から6000万に/浮き沈み経過