21年シーズンのブレークが期待されるイチオシ選手を各球団の担当記者が紹介します。楽天から辰己涼介外野手(23)です。

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「未完の大器」の覚醒が待ち遠しい。辰己は2年目の昨季を不本意な結果で終えた。1年目から20試合減らし104試合出場。自己最多8本塁打、28打点も、打率2割2分3厘、11盗塁は1年目を下回った。「今年も走攻守でなかなかうまいこといかんかった。全部を底上げしないといけない」。期待値と現実のギャップ。危機感がにじんだ。

立命大から18年ドラフト1位で入団。絶対的な新多能力の高さを武器に、走攻守3拍子でハイスペックなルーキーは3割30本塁打30盗塁の「トリプルスリー」を目標に掲げ、夢を描いた。ただ、レギュラー定着に至らず、伸び悩む。

ロッテ藤原を外し、4球団競合の末、当たりくじを引き当てた石井GM兼任監督は「今年のテーマは辰己を一人前にしていかないといけない、と僕自身思って臨んだシーズン。ただやっぱり周りも本人もその意識が強すぎたのかなと。まだ考え方が甘いというか、そこはやっぱり彼は根がまじめな選手。そっちの方向に行ってしまった」と辰己の2年目を振り返る。「ふざけるというか、もう少し遊びがあった中でできることが、パフォーマンスを上げる1つの方法になる。非常にいいものは持っている」。まだ表に出し切れていない能力、素質を最大限に発揮させる環境、考えの構築に頭を巡らせる。

走攻守で粗削りな部分を時折見せる。ただ、多くの人々に果てしない期待を持たせるほど、秘める力は末恐ろしい。8月15日西武戦。3点を追う8回にギャレットの真ん中高め153キロを左中間席へ放り込み、1点差の9回には守護神増田の149キロを中前へはじき同点打。速球自慢の2投手を打ち、引き分けに持ち込んだ。「結果が全て。チームとしてはもちろん優勝、個人としては、石井監督に対しても、そうですし、結果で恩返ししたいなと思います」。2021年こそ“3年目の正直”。本領発揮だ。【桑原幹久】