特命記者里崎智也氏(44)が、今度は見方を変えて盗塁に迫る。防ぐ側から見て、いかに盗塁企図をさせないか、という視点から検証する。1盗塁企図に要するイニング数、いわゆる「里崎指数」によって走者から盗塁の意欲をそぐ最強バッテリーを分析した。【データ担当=伊藤友一・多田周平、構成=井上真】

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(1)青柳-梅野(阪神)の急成長

里崎 今季はペナントレースの試合数が減ったとはいえ、青柳-梅野組の85・67は見事ですね。昨年の16・42から5倍の大躍進です。サイドスローでクイックも巧みです。シーズン通して、梅野とのバッテリーで企図1というのは立派。これで走者も研究してくるでしょう。来季の青柳-梅野と走者の戦いから目が離せませんね。

(2)床田と涌井のデータから分かること 

里崎 特徴的な数字が出ましたね。まず、涌井-太田(楽天)から考えます。里崎指数40・50はとてもいい。ただ、読み込んでいくと、石原や足立らと組んだ時は7・00と数字が下がります。これは、太田との相性がいいという側面と、他の捕手とのコンビネーションにまだ成長の余地があるとも言えそうです。

対照的なのは床田(広島)だ。80%は坂倉と組み、里崎指数は61・67。そして、会沢らと組んだ時は企図は0。60イニング以上投げた中で企図1は床田だけ。

里崎 左腕の床田は質の高いクイックが身に付いているから、誰と組んでも差が出ないということですね。昨年の数字も抜群でした。こうなると、捕手も信頼してリードに専念できるようになります。昨年会沢とのバッテリーで57・50で全体2位の里崎指数だった九里は、今季は坂倉と組んで12・67。研究されたことがうかがえます。涌井は捕手によって企図数が変動し、床田は誰と組んでも一定して企図させない技術を確立している。盗塁を阻止するために投手のけん制、クイックという技術がいかに大切かがよくわかりますね。

(3)いくら甲斐でも… 甲斐キャノンとして球界トップの捕手に成長した甲斐だが、東浜、千賀、石川とのバッテリーでは里崎指数15~19とまずまずの数字も、ムーアと組むと7・07と極端に下がる。外国人投手はクイックに対する取り組みにばらつきがでる。ムーアのクイックの完成度ではいくら甲斐キャノンでも限界があると言える。

(4)日本ハムの改善点 同様にバーヘイゲン-清水も苦戦を強いられた。

里崎 このバッテリーの里崎指数2・88はかなり厳しい数字ですね。約3イニングに1度は盗塁を企図されるのですから、清水の阻止率を含めて考えると走者を出せばかなりの高確率で二盗されるわけです。これは改善すべきポイントですね。